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小島太氏がエール 35年間のジョッキー生活を終えた新米調教師が新たなる挑戦を語った

スポーツ報知
  • 2024年02月06日(火) 06時00分
 昨年末で騎手を引退した田中勝春調教師(52)=美浦=と、公私で親交がある小島太さん(76、スポーツ報知評論家)の対談が実現した。「調教師になれば一段と魅力が増す」と太鼓判を押した大先輩と新米調教師に、35年間のジョッキー生活を終えた現在の心境から、過去の小島太厩舎との思い出、そして新たな挑戦となる未来の話まで、たっぷり語り合ってもらった。(聞き手=西山 智昭)

 ―小島太さんと田中勝春調教師は騎手時代から旧知の仲だとうかがっています。

 小島太さん(以下、太)「ジョッキーになりたての頃からかわいい顔をしていたけど、馬を御すのは達者だった。長い間ジョッキーをやって年齢がいってからの挑戦だったから心配していたけど、本当によく頑張った。すごい人だ。今度は従業員を使わなくちゃいけないし、馬主との関係も幅広くやらないといけないんだけど、田中先生ならこなしてくれるんじゃないかと思ってますよ」

 田中勝春調教師(以下、勝春)「いきなり持ち上げますね(笑い)」

 ―調教師を意識した時期、きっかけを教えてください。

 勝春「50歳ちょっと前ですかねぇ」

 太「遅いよなぁ。俺でさえ45歳で考えて、そして48歳で調教師になった」

 勝春「四位(洋文)先生が『一緒に馬を見に行こう』って背中を押してくれたのもあったし、それまでに騎乗数が減ってきていたのもあって」

 ―騎手引退から1か月経ちましたが、何か変化を感じますか?

 勝春「生活リズムの変化は、もう調整ルームに入らなくなったこと」

 太「もう行っちゃだめだよ。俺も(騎手引退後に)行って嫌な顔された。『あぁ、いけねえ』と。けじめが大事なんだけど、慣れって怖いものでね」

 勝春「調整ルームの風呂に入れなくなるのは寂しかった。荷物を運ぶ時も、誰もいない間にコソーっと部屋を整理しに行ったりして。何やってるんだろう、俺と(笑い)」

 ―騎手時代を振り返ってもらいますが、小島太厩舎での重賞挑戦は72戦でした。

 太「いやあ、すごいなぁ。期待、いや頼ってたんですね、田中ジョッキーに」

 勝春「俺しか空いてなかったのかもしれないけど(笑い)」

 太「当時のうちの頼みは、岡部さん(元騎手)、武豊さん。あと蛯名正さん(現調教師)もだけど、みんな売れっ子だったし、完全にキープできたのがこの方(笑い)」

 勝春「なぜか依頼があった時は意外と空いてたんだよなあ(笑い)」

 太「本音を言えば、腕を買っていたからね。今でも覚えているけど、サクラプレジデントが新馬戦を勝った時はうれしかった。次に札幌2歳も勝って、これでクラシックに行けると」

 勝春「いい背中をしていましたね。柔らかくて、しなやかな動きをする馬で、瞬発力もあった」

  ―朝日杯FSが首差、皐月賞は頭差で2着。G1はわずかに届きませんでした。

 太「つい最近、うちのせがれ(調教助手)と短距離だったらサクラバクシンオーより強かったかもしれないという話をしたんだ。肩が立っていて、ちょっと首が短めの馬で体形的に長い距離はきつかった。でも、弱点をさらして勝負に向かうのは失礼だから、当時は絶対に語らなかったけど」

 勝春「印象に残っているレースは、やっぱり新馬戦(札幌・芝1200メートル)。この馬走るなぁと。能力を測れるのは短距離の新馬だと思う。長い距離を走れる馬でも強かったら勝っちゃう。だって将来のオープン馬と未勝利が一緒に走るわけだから。だから1200メートルって重要なんですよ」

 太「期待馬のデビュー戦もそうだし、改めて振り返ったらよく乗せてたなあ。イーグルカフェ(芝とダートでG1制覇)にも乗せたよな?」

 勝春「そうです。ありがとうございます(笑い)」

 太「(02年の七夕賞制覇は)うれしかったよ。上手に乗ってくれた。テレビで見ていて、はしゃいだなぁ」

 勝春「あの時は先生、北海道にいたんですよね」

 太「レース後に報告してくるジョッキーなんていないもんだよ。俺も騎手だったから分かるけど、いなけりゃ安心して乗れるし。もし現場にいて負けると俺、ブスッとしてるから」

 勝春「いなくて良かったですよ。乗りたいように乗れたから(笑い)」

 ―今後についてのお話もうかがいたいのですが、調教師の先輩としてアドバイスはありますか?

 太「親心として言わせてもらえるなら、波がありますんでね、この仕事は。やはり焦らないことが大事だと思う。成績が良くない時に、勝ちたい気持ちを抑えて、ひと呼吸置いて。例えばレースに使わないのも勝負なんですよね。なかなか難しいことなんですけど、私も何度も失敗していますので。それを頭に入れて置いて欲しい、それだけですね」

 勝春「深いですねえ。とりあえず、今は色々と考えすぎず、与えられた馬をきっちり仕上げて、レースで走ってもらえればいいなと思っています」

 太「本当はもっともっと上にいくジョッキーだったと思っていたから、いちファンとしては(騎手時代の成績は)不満なんですよ。ただ、調教師という立場になった時、落ち着いてピリピリせずにやれる人だし、騎手時代に物足りなかった優しすぎる部分は調教師でいい方に出るんじゃないかと。ジョッキー時代は素晴らしい人間関係を築いていたし、調教師になったら一段と魅力が増すんじゃないかと。あなたは本物のホースマンだから、きっとトレーナーとしても大活躍しますよ」

 勝春「急に緊張してきちゃった(笑い)。小島厩舎の馬は調教でも乗せてもらっていて、その頃から勉強になっていた。当時のことも思い出しながら、自分なりにやっていけたらいいなと思っています」

 ◆田中 勝春(たなか・かつはる)1971年2月25日。北海道生まれ。52歳。89年に騎手免許を取得し、同年10月21日に初勝利。90年の京王杯AH(オラトリオ)で重賞初制覇。92年安田記念(ヤマニンゼファー)でG1初勝利を飾った。JRA通算2万657戦に騎乗し、歴代12位の1812勝。重賞はG1・2勝を含む51勝。

 ◆小島 太(こじま・ふとし)1947年4月11日。北海道生まれ。76歳。66年に騎手デビュー。2度の日本ダービー制覇など通算1024勝。調教師としてはイーグルカフェマンハッタンカフェでG1を制し、通算476勝。騎手と調教師を合わせて通算1500勝を達成した。趣味は大相撲観戦。

スポーツ報知

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