「
フェブラリーS・G1」(18日、東京)
大波乱の幕開けとなった。今年最初のJRA・G1を制したのは、11番人気の伏兵
ペプチドナイル。好位から力強く抜け出し、G1初挑戦で
ビッグタイトルを手にした。藤岡佑は18年NHKマイルC(
ケイアイノーテック)以来6年ぶり2度目のJRA・G1制覇。武英師は開業7年目にして初のG1タイトルを手にした。2着は初ダートに挑んだ5番人気の
ガイアフォース。3着には13番人気の
セキフウが入り、3連単は153万馬券に。1番人気の
オメガギネスは直線失速して14着に敗れた。
最後の直線。人気を背負った面々が、激流にのまれて脱落する。そんなサバ
イバルレースを制したのは、まさに“大河”を連想させる名の
ペプチドナイル。先行勢でただ一頭、シビれる手応えで流れに乗ると、難敵の猛追を振り切り栄光のゴールへ。こん身の右ステッキで鼓舞した藤岡佑は、スタンドへ向けて“どうだ!”と言わんばかりに右手を突き上げた。
好発を決めて好位に取りついたが、前半3Fの通過が33秒9という
ハイラップ。外から
ウィルソンテソーロがかぶせてきたが、それには付き合わず、「3角で一列下げたのが勝因。あそこで突っ張っていたら勝利はなかった」と鞍上は振り返る。ためが利いたことで、最後にもうひと伸び。あまりにも早く先頭に躍り出たのは想定外だったが、「何とか粘ってくれ!と。直線は長かった。馬自身が頑張ってくれました」と相棒をたたえた。
以前は逃げ一辺倒だったが、藤岡佑の手綱で脚質転換に成功。前走の東海Sこそ6着に敗れたが、「最悪な枠だった。この馬は取りたいポジションで収められるかが大事。その点、今回はパッとイメージが沸いた」と自信を持って臨んだ。武英師との思惑も一致。敗戦を糧に、
ポジティブな発想が勝利を引き寄せた。
武英師はこれがG1初制覇。「他の馬で人気して勝てないことが続き、G1の壁は厚いと感じていた。本当にうれしい」と安どの表情を浮かべた。沼川一彦オーナーには「ジョッキー時代、一番しんどいときにお世話になった」と恩義を感じていた。それだけに「何とかこの馬でと思っていた」と胸をなで下ろした。
弟のようにかわいがってきた後輩とつかんだ勝利。師は「厩舎の初勝利も、初G1もユースケでした」と頭を下げる。そんな中、藤岡佑が「“良くやったな”と言ってやりたいです」といたずらっぽく話せば、指揮官も「さらに生意気になるんだろうなと思います」と笑顔。友情タッグで今後もともに高みを目指す。
次戦について、師は「結構使っているのでまず体調を見てから」と明言を避けたが、賞金の心配がなくなり「馬に合わせたローテを組みたい」と前を向く。
レモンポップと
ウシュバテソーロ不在のG1を制した“暫定王者”の立場かもしれないが、「秋に向けて力をつけ、チャレンジできれば」と鞍上に慢心はない。決意を新たに、視線の先には既に真の頂上決戦を見据えている。
提供:デイリースポーツ