◆サウジダービー・G3(2月24日、キングアブドゥルアジーズ競馬場・ダート1600メートル)
一晩で夢をつかんだ。
パンサラッサが昨年のサウジCで優勝賞金1000万ドル(13億1864万9700円=当時レート)を獲得して、もうすぐ1年が経つ。
矢作芳人調教師は「(13億円は)ダメだよね、感覚が狂ってしまって。よろしくない」と笑うが、芝が主戦場だった愛馬を出走させたのは冷静な分析があってこそ。「アメリカと一緒でスピードが必要と強く感じた。先行力かつ持久力。前に行って、どれだけ粘れるか」と振り返る。
サウジCこそ出走馬がいないが、今年は3頭を送り出す。特に熱い視線を送るのがサウジダービーの
フォーエバーヤングだ。
全日本2歳優駿は今までの後方追走から一転、好位から脚を伸ばす形で7馬身差をつけた。「驚いた。テストではあったが、あの競馬ができないとサウジは通用しないから」。
無傷の3連勝で最高の“答え”を出した愛馬には特別な思いがある。父は
リアルスティール。16年のドバイ・ターフで厩舎の海外重賞初タイトルを届けてくれた。「世界のYAHAGI」の原点だ。自ら手がけた馬の子による海外遠征も初めて。「感慨深いものがありますね。次のドバイ(UAEダービー)も決まっているので、そこに子供で行ける」と口にする。
手綱を託すのは厩舎所属の坂井だ。「世界に向けてというのはデビューする前から、お互いの夢と言うより、目標だった。瑠星からも聞いていたし、俺も言ってきたから」。だからこそ、まだデビュー2年目に豪州へ1年間の武者修行へ行かせた。英語も覚えさせた。ずっと二人の視線の先に世界の大舞台があったからだ。
今回の中東遠征次第で米国の
ケンタッキーダービー(5月4日、
チャーチルダウンズ競馬場)への参戦プランもある。「もう一段、
パワーアップしています。それでどこまでやれるか。楽しみの方が大きいですね」。今年は師弟で大きな夢の種をまく。
(山本 武志)
スポーツ報知