昨年9月30日の阪神1R。
菱田裕二騎手=栗東・
岡田稲男厩舎=は、パドックで騎乗した際に左肩を脱臼した。「整復の処置をして、何とか(外れた)肩を入れてもらって、テーピングもしっかりしましたけど、腕が上がらなくて…。(メインの
シリウスSに)どうしても乗りたかったのですが」と最大限努力したものの、無念の戦線離脱となった。
休養中には、初勝利時から騎乗していた
アーテルアストレアが交流G2の
レディスプレリュードを勝利した。手綱を執った
武豊騎手はインタビューで「菱田騎手から細かく特徴を教えてもらっていたので、いいアド
バイスをもらいました」と話していた。それを聞いた菱田騎手は「アド
バイスだなんて…。アーテルの感触とかをお伝えしただけです」と謙遜したが、大きな力になったことは間違いない。
続く
JBCレディスクラシック、チャンピオンズCの2戦は現地に足を運び、応援した。「ずっと携わってきた馬ですし、いいレースをしてほしいと思って」。初勝利が逃げ切りだったアーテルを、控えて競馬ができるように教えた。思い入れが強いのもうなずける。記者もチャンピオンズC当日に本人と会って話したが「ここまで立派になってくれて」と返し馬に向かう姿に目を細めていたのを鮮明に覚えている。
ケガが癒えた菱田騎手は昨年12月24日、実戦に復帰した。だからといって、お手馬が戻ってくる保証はどこにもない厳しい世界。だが、
アーテルアストレアの陣営は主戦ジョッキーを待っていた。今月7日の交流G3・
クイーン賞で、4戦ぶりに背中にまたがった。レースでは12回目の騎乗だった。「依頼をいただけてうれしかったですね。アーテル、オーナー、(橋口)先生に感謝です。そして担当の酒井さん(助手)も、いつもいい状態に仕上げてくださいます」。思いのこもったバトンを受け取り、逃げ粘る
テリオスベルを直線で競り落とし、見事にコンビ復活を勝利で祝った。
レース後、感無量の表情で勝利騎手インタビューに答えていたことを問うと「ケガで悔しい思いをしたことが頭をよぎりましたね。少し焦りもありましたが、諦めなくてよかった」と笑顔をみせた。
2月17日に東京競馬場で行われた
ダイヤモンドS・G3でも、見事な手綱さばきで
テーオーロイヤルを2年ぶりの勝利に導き、
JRA重賞6勝目をマークした。「今年はG1や重賞のチャレンジが待っていると思うので、チャンスでしっかりと結果を出したいです」とさらなる活躍を誓った。
ファンに向けては「僕は個人的にSNSはやっていませんが、競馬場で皆さんが応援してくれていると感じています。しっかりと技術を磨いて、応援してくれる人を勇気づけたり、元気にしたいです」と彼らしい、実直な性格が言葉にもにじみ出ていた。これからも真っすぐに、誠実に競馬に取り組む姿を応援していきたいと思う。(
中央競馬担当・山下 優)
スポーツ報知