【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、阪神競馬場では
チューリップ賞(G2)が行われる。17年にこのレースを勝ったのは
ソウルスターリング。伯楽・
藤沢和雄師(22年引退)が管理し、
ルメール騎手が騎乗した。
話はさらに1年、さかのぼる。16年夏の札幌。藤沢和師とルメールと一緒に食事する機会があった。アルコールも進み、皆が本音で話すようになった頃、名調教師が言った。「今週末にデビューする馬は先々楽しみだと思うよ」
これに対し「先々なので今週ということではないのですね?」と意地悪く返すと、師は笑いながら答えた。「仕上がっちゃったから使うし、もちろん、期待はしているけど、正直、跳びが大きくて、小回り向きの馬ではないかな…」
その馬こそが
ソウルスターリングだった。同馬は新馬戦を難なく勝利する。レース後「心配無用の強さでしたね?」と声をかけると、真一文字に結んでいた唇を開いて言った。「勝てば良いというものではありません。競馬ぶりを見ていると、やはり小回りは合わない。クリストフ(ルメール)ともその意見は一致したので、今後は広い競馬場を中心に使っていきたいです」
有言実行だった。2戦目は東京開催まで待ったため約3カ月後。このアイビーSを勝利すると、3戦目の阪神JF、その後の
チューリップ賞と広い阪神で連勝。無敗で迎えた
桜花賞こそよもやの3着に敗れたが、続く
オークスでは2着に1馬身3/4差をつけて楽勝。すると、藤沢和師は
ニコリとして言った。「大きいコースの方が合っていますね」。その笑みには「デビュー前から言った通りだろ?」という矜持(きょうじ)がみてとれたものだ。
藤沢和師は引退したが、ルメールは今年の
チューリップ賞で
ガルサブランカ(木村)に騎乗予定。新潟、東京で1、2着の同馬だが、果たして阪神ではどんなパフォーマンスを見せてくれるだろう? (フリーライター)
スポニチ