スマートフォン版へ

世界の競馬界で存在感増すサウジC なぜ大金をかけるのか トップホースが集結する理由とは

デイリースポーツ
  • 2024年03月05日(火) 06時00分
 「サウジC・G1」(2月24日、キングアブドゥルアジーズ)

 デイリースポーツ競馬記者が今届けたいサイドストーリーを発信するコラム「ケイバのゲンバ」がスタート。初回はサウジCを現地取材した島田敬将記者が担当する。開始当初は世界最高賞金レースという一面に注目が集まっていたが、年々出走馬のレベルが上がり、世界の競馬界においてその存在感は増すばかりだ。取材で感じたサウジCの現状とこれからを関係者の証言とともに検証する。

  ◇  ◇

 セニョールバスカドールの優勝で幕を閉じた今年のサウジC。特筆すべきはメンバーレベルの高さだった。ペガサスワールドCの勝ち馬(ナショナルトレジャー)に、昨年の世界ランキングでダート部門トップタイの評価を受けたホワイトアバリオが、BCクラシックの勝ち馬として初めて参戦。日本からも最上位のメンバーが集結し、実質的に日本の頂上決戦の意味も持ち合わせていた。

 今回の日本馬はいずれもフェブラリーSの出走を見送っている。関係者の一人は「ダートG1が芝スタートなんてありえない」と競走条件が合わないことを理由に挙げていたが、もう一つは賞金面だ。今年のサウジCの1着賞金は日本円で約15億円、2着5億2500万円と続き、5着でもフェブラリーSを上回る1億5000万円。遠征リスクを上回るインセンティブがある。

 なぜサウジはここまで大金をかけるのか。世界的なクリーンエネルギーなどの台頭もありサウジは現在、値動きが不安定な石油依存の財政構造からの脱却を図っている。その柱となるのがムハンマド・ビン・サルマン王子が旗手となって推し進めている「サウジビジョン2030」。ざっくり言えば、石油だけに頼らない次世代産業の育成がテーマで、その範囲は文化や観光産業といった国外向けのソフトパワーにも及ぶ。サウジC諸競走デーの主要スポンサー「ブティックグループ」はまさにムハンマド王子が公的投資機関と共同で立ち上げた企業。国策ツールの一つとして競馬を組み込んでいるのなら、熱が入るのも当然だろう。

 同じ中東でもドバイは対照的だ。競馬新興国のイメージが強いサウジに対して、早くから積極的に日本馬が遠征してきたのがこの国だが、最近の傾向を矢作師はこう説明する。「今のドバイ(ワールドC)は登録料だけで約10万ドル、日本円で1500万を超える。こちら(サウジ)は登録料が無料。ほぼノーリスクで行けるのは、我々からするとありがたい。今は競馬にかけている資金が絶対的に違う。言い方が悪いけど、ドバイはだんだんセコくなっている」。他にも1頭につき厩舎関係者2人が渡航旅費無料のサウジに対しドバイは1人。ドバイは細かいところまで財布のひもが固くなってきている。

 賞金面に加えて、競馬関係者への手厚いサポート。今回が5回目となったサウジCの存在感は世界の競馬界において着実に高まっている。「サウジCはすごく難しいレースになってきた。今回はかなりレベルが高かった。またトライしたい」。レース後にルメール騎手が語ったように、日米のトップホースが集結した今大会を見ても既にその傾向は現れている。慎重な見方をすれば、今後のサウジCの運営に関してはムハンマド王子の“鶴の一声”でまた違った形になる可能性も捨てきれない。ただ、このままいけば、名実ともに世界のダートの頂点を決める祭典になるだろう。

提供:デイリースポーツ

みんなのコメント

ニュースコメントを表示するには、『コメント非表示』のチェックを外してください。

ミュート・コメント非表示の使い方
  • 非表示をクリックし「このユーザーの投稿を常に表示しない」を選択することで特定のユーザーのコメントを非表示にすることができます。(ミュート機能)
  • ※ミュート機能により非表示となった投稿は完全に見えなくなります。このため表示件数が少なく表示される場合がございますのでご了承ください。なお、非表示にしたユーザーはマイページからご確認いただけます。
  • 『コメント非表示』にチェックを入れると、すべてのニュース記事においてコメント欄が非表示となります。
  • ※チェックを外すと再びコメント欄を見ることができます。
    ※ブラウザを切り替えた際に設定が引き継がれない場合がございます。

アクセスランキング

注目数ランキング

ニュースを探す

キーワードから探す