週末の出走馬が7日、確定した。新規開業調教師8人は今週、新たな門出を迎える。中でも注目は騎手としてダービー3勝と輝かしい実績を打ち立てた
福永祐一師(47)だろう。涙の引退式から1年。同じ阪神で初陣を迎える。土曜11Rの
レオノーレは4分の1の抽選を突破して
武豊(54)との夢タッグ。祝福ムードに包まれつつ、厩舎初勝利を目指す。
運命の午後3時、夢の扉は開かれた。福永厩舎の初陣が土曜阪神11R
コーラルSの
レオノーレに決まった。鞍上は
武豊。抽選対象だったが、4分の1の狭き門をくぐり抜けた。福永師は「うわっ、入ってる。凄いわ」と驚きの声。レジェンドとの門出に周囲も興奮に包まれた。「ユタカさんに迷惑を掛けなくて良かった。抽選運はこの業界で一番強い人。“さすが
武豊だな”と思いました」と笑顔を見せた。
武豊は
有馬記念の枠番抽選会などでズバズバ好枠を引き当ててきた。ともあれ「馬の調子はいいですし、使えるのはうれしい。レースまで日にちがあるので、いい状態に持っていけるように管理したい」と気を引き締めた。
日曜阪神10Rの
マルブツプライドは福永師とゆかりの馬。96年の騎手デビュー時に初騎乗初勝利をマークしたのが同じ冠号の
マルブツブレベスト。「自分が一番未熟な時に数多く乗せてくださったオーナー。恩返しができればいいなと思っています。解散予定厩舎にいて、引き継がせてもらえるのは縁を感じますね」としみじみと語った。敬意も忘れない。この2頭ともに開業初週に使えるのも、引退した安田隆師と加用師の協力があってこそ。「2頭とも3週前と早くからまたがらせていただいて、調整することができました。感謝していますし、ありがたいです」と話した。
6日に厩舎を開業、大仲(スタッフの休憩所)からは笑い声が聞こえてきた。「仕事は楽しくやらないと。調教師がしかめっ面をしていてもね。人間は気持ち新たになっていますけど、馬は変わりない日常。スタッフの意見を聞きながら、個々に合ったいい形を模索してやっていきたい」と前を向いた。さあ、初陣。パドックで福永師と
武豊はどんな対面を見せるのか。レジェンドと紡ぐ第二章。その始まりから、目が離せない。
◇福永 祐一(ふくなが・ゆういち)1976年(昭51)12月9日生まれ、滋賀県出身の47歳。96年に栗東・北橋修二厩舎所属でデビュー。ルーキーイヤーに53勝、
最多勝利新人騎手に輝く。99年
桜花賞(
プリモディーネ)でG1初制覇。11年
最高勝率騎手、13年
最多勝利騎手、
最多賞金獲得騎手などのタイトルを獲得。18年に
ワグネリアンに騎乗し、19度目の挑戦でダービー初制覇。
JRA通算2636勝は騎手歴代4位で重賞160勝。22年12月に新規調教師免許試験に一発合格。血液型B。
《千葉師大志抱く「海外大レースで」》
JRA通算24勝の元ジョッキー
千葉直人師(37)は昨年、技術調教師として
ウシュバテソーロの海外遠征に同行し、自分も「いずれ海外の大レースで」と大志を抱いた。
フクロウが描かれた厩舎ジャンパーを身にまとい、「人馬ともに“不苦労”で苦労がなく、視野が広い
フクロウのようにさまざまな角度から固定観念にとらわれずに馬にアプローチして、そして大きく羽ばたけるように」と理想の厩舎像を思い描いた。初週から管理馬3頭を送り出す。
【新規開業調教師のひと言】
▼小椋師 松下厩舎のような働きやすく伸び伸びと仕事をしやすい厩舎にしていきたい。まずはいい状態で出走させて、少しでも上の着順を目指していきたいと思います。
▼河嶋師 中竹厩舎で培ったことをベースにしながら自分の色も合わせていきたい。一戦一戦を大事にスタッフや馬が無事に戻ってこられる厩舎を目指していきたい。
▼高橋一師 即開業という運びになり、ここまで協力していただいた方々に感謝しています。
▼藤野師 日本だけでなく世界も視野に入れていきたい。新しいことにチャレンジしながら、従業員の意見も取り入れて風通しのいい厩舎をつくっていきたい。
▼森一師 堀厩舎で学んだことをベースに、そこを目標にやっていきたい。素晴らしい馬が多い厩舎だったので、物おじせずにやっていけると思う。将来的には日本を代表する厩舎にしていきたい。
▼矢嶋師(紺とグレーを基調とした厩舎服は)師匠である手塚先生の厩舎の紺と、グレーは慶応の野球部のユニホームから。馬も人も伸び伸びとやっていける厩舎にしたい。いずれはG1のような大舞台で活躍できる馬を育てたい。
スポニチ