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【追憶の阪神大賞典】01年ナリタトップロード 渡辺薫彦の乗りっぷりを変えた“第三者の目”の経験

スポニチ
  • 2024年03月13日(水) 06時45分
 01年の阪神大賞典を制して検量室前へと引き揚げる渡辺薫彦騎手(現調教師)の目に涙が浮かんでいるように見えた。「よかったな!」。騎手仲間が次々と肩を叩く。

 すでに99年菊花賞を制していたナリタトップロードにとって、G2制覇は珍しくない。だが、この1勝に大きな意味があったことを周囲はよく知っていた。

 話は前年の有馬記念にさかのぼる。その99年菊花賞を最後に、ナリタトップロードは7戦、白星に見放されていた。陣営は渡辺騎手を降ろし、的場均騎手(現調教師)を鞍上に据える決断をした。

 的場騎手は精力的に動いた。1週前、当該週と2度にわたって栗東に赴き、ナリタトップロードの動きを確認した。沖厩舎で調教師、渡辺騎手とミーティング。そしてレースのライバルであるテイエムオペラオー和田竜二騎手とも会話をかわした。

 「ナリタトップロードの癖をしっかりとつかむことができた。収穫は大きかった」。的場騎手は語った。そして、もっと大きな成果があったと言う。「和田騎手と話せたことが大きい。彼の表情、性格、しぐさを知っておくことが大事。そうすればレース中、テイエムオペラオーの動きをいち早く察知できるかもしれない」

 結果的にはナリタトップロード有馬記念で9着に敗れ、続く京都記念も的場騎手騎乗で3着。勝利にはつながらなかった。だが、間近で渡辺騎手は的場騎手とナリタトップロードの姿をしっかりと見ていた。

 渡辺騎手の乗りっぷりは明らかに変わった。3戦ぶりにナリタトップロードとコンビを組んで挑んだ阪神大賞典。4コーナーで外の3番手へと押し上げる。残り300メートルで突き放した。

 自信に満ちたエスコート。ナリタトップロードもそれに応えた。どこにも迷いはない。人馬一体の美しい乗りっぷりに、周囲は心を動かされ、渡辺騎手も涙したのだ。

 沖師はレース後、こう語った。「渡辺を降ろしたのは第三者の目でレースを見てほしかったから。的場騎手との走りから何かをつかんでくれたと思う。それがこの勝利につながったんだ」。現在、渡辺師は河原田菜々騎手を弟子に持つ。いつか、河原田騎手にも、師匠と同じような経験ができる時が来ることを祈りたい。

スポニチ

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