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矢作厩舎で研修中の前川師 目指すは馬も人も過ごしやすい厩舎

スポニチ
  • 2024年03月13日(水) 10時34分
 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は栗東取材班の坂田高浩(39)が担当する。昨年、新規調教師免許試験に合格し、今年1月1日付でJRA初の女性調教師となった前川恭子技術調教師(46)を取材。開業に向け、現在は矢作芳人厩舎で研さんを積んでいる。国内外で活躍する一流厩舎で学んだことを聞いた。

 先週水曜、8人の新規開業調教師が門出を迎えた。昨年、調教師試験に合格した前川師は現在、開業に向けた準備期間である技術調教師の立場。自身の開業時を思い浮かべながら日々を過ごしている。

 年初から矢作厩舎で研修中。先月のサウジCデーの遠征にも同行した。テレビ中継ではサウジダービーのパドックでフォーエバーヤングを引く姿が映し出された。1351ターフスプリント出走のバスラットレオン、レッドシーターフハンデキャップ出走のリビアングラスの僚馬2頭を含め、異国でのノウハウを間近で学んできた。「調教時間が限られていたり、治療するにしても制約が多い中、スタッフの方は気負わず、馬もリラックスしているので凄いです」と驚いた。

 自身も坂口厩舎の調教助手時代にゴールドクイーン(20年ドバイゴールデンシャヒーン)で海外遠征の経験はあるが、コロナによる開催中止でレース出走はならなかった。「担当者がケガをしていたので、代わりに行かせてもらったんですが何も分からなくて結構、困りました」と苦笑いしつつ、鮮明な記憶として振り返るのが隣の馬房だった矢作厩舎のラヴズオンリーユーの姿だった。「牝馬は環境が変わるとカイバを食べなかったりして難しいんです。ラヴズオンリーユーもそんな感じだったんですけど、その後にあれだけ海外で結果を出して凄いなと。どうしたら走るのか興味があって」。矢作厩舎の牝馬は他にもリスグラシューマルシュロレーヌなど活躍が目覚ましい。厩舎力を肌で感じ、迷わず門を叩いた。「1年間、研修をさせていただくことになりました。ドバイにも行きますし、いい経験を積めています」と充実の口ぶり。「先生は女性がぜひ活躍するべきだとおっしゃっていました。競馬界全体を考えてのことだと思います」と受け入れてくれた矢作師、そして厩舎スタッフらへの感謝の思いを口にした。

 矢作厩舎といえば「よく稼ぎ、よく遊べ」をスローガンに掲げる。昨年もJRA出走回数(507回)は断トツだ。「どんどん使って、どんどん稼ごうという先生の気持ちが厩舎のみんなに伝わって、楽しそうにしています」と風通しの良さを感じている。「先生がいらっしゃらない時でもアプリなどを使って連絡を凄く密にしています。任せるところは任せるし、把握もしています」と明かす。絶妙なさじ加減が厩舎の繁栄につながっている。

 JRA初の女性調教師。その肩書を意識してか、試験合格後には「もっと女性の方に入ってほしいので、そういう意味でアピールできたら」と気を引き締める。馬も人も過ごしやすい理想の厩舎像を追い求めて、新たな道を切り開く。

 ◇坂田 高浩(さかた・たかひろ)1984年(昭59)11月5日生まれ、三重県出身の39歳。07年入社で09年4月〜16年3月まで中央競馬担当。その後6年半、写真映像部で経験を積み、22年10月から再び競馬担当に。

 ◇前川 恭子(まえかわ・きょうこ)1977年(昭52)4月9日生まれ、千葉県出身の46歳。03年JRA競馬学校入学。03年から栗東・崎山博樹厩舎で厩務員を経て調教助手。厩舎解散後、19年から坂口智康厩舎へ。昨年、新規調教師免許試験に合格。思い出の担当馬は08年京阪杯を制したウエスタンダンサー

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