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ファンサービスでも騎手で一番誓う横山武の“神対応”

スポニチ
  • 2024年04月12日(金) 10時45分
 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の田井秀一(31)が担当する。「騎手の中で一番ファンサービスをする人間になりたい」と語る、昨年の関東リーディングジョッキー横山武史(25)にその思いを聞いた。

 サラブレッドが駆け、歓声や悲鳴が飛び交う。コロナ禍でも歩みを止めなかった競馬は今、日常の風景を取り戻している。ウイナーズサークルでは「サインください!!」の声。即席サイン会はファンが騎手に最も近づけるイベントだ。

 「サインを求めていただけるのは騎手としてうれしいことです。お客さまが笑顔で楽しめる競馬場にしたい」と話すのは横山武史騎手。そのファンサービスはSNS上で頻繁に“神対応”と話題に上る。6日のニュージーランドT(エコロブルームでV)後もサイン会は時間ギリギリまで続いた。

 思い返せば、入場制限が行われていたコロナ禍、報道各社が合同インタビュー後にグッズへのサインを求めた時もその多さに閉口せず「今は競馬場に来られない人もいますから。いくらでも書きます」と笑っていた武史騎手。ファンサービスへの思いを強めたきっかけはエフフォーリアとともに制した21年有馬記念の前日、新馬戦での不注意騎乗だという。裁定では着順に影響があったとは認められなかったが、「皆さまの信頼を損なうような騎乗をしてしまいました。競馬はギャンブルであり、お客さまのおかげで成り立っています。毎レースに大金が懸かっていますし、それは到底、僕が一人でお返しできる額ではありません。お客さまには馬券で貢献して返すしかありませんが、毎回勝てる甘い世界ではありませんから、感謝をじかに伝えられるファンサービスにより一層、力を入れなければならないと考えました」。

 実は記者も幼少期、ウイナーズサークルにいい思い出がある。京都競馬場で大ファンである横山典弘騎手サインがもらえた。ジョッキーを志す少年にとってはかけがえのない宝物。力及ばず、騎手でなく記者になったわけだが、息子である武史騎手から「騎手の中で一番ファンサービスをする人間になりたいと思って取り組んでいます」という言葉が聞けた時は何だか泣きそうになってしまった。

 ただし、このサイン会は転売やマナー違反の場所取り等の問題が現在進行形。JRAは昨秋の定例記者会見で「あまりにもひどいようであれば一定の制限を考えなければならない」と言及している。しかし、あの長蛇の列には、将来、競馬界の門を叩くことになる少年少女も交じっているはず。制限なんてもってのほかだ。「時間が許す限りサインしますので、順番やルールをしっかり守ってお互いに気持ち良く楽しめるようにやっていければ」と武史騎手。人手不足が叫ばれる競馬界。馬産地、育成場、地方競馬はもはや外国人労働者なしでは成り立たない状況まできている。JRAは人的リソースをしっかりと割き、ファンが憧れの騎手たちと“気持ち良く”交流できるウイナーズサークルを死守すべきだと思う。 

 ◇田井 秀一(たい・しゅういち)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪府出身の31歳。高校卒業後、道営で調教厩務員を務めた経験を持つ。阪大卒。19年春から競馬担当。22年からBSイレブン競馬中継で解説。

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