これまでに数多くの“2強”対決が生まれてきたが、戦前の盛り上がりという意味では、このレースが一番だったのではないだろうか。92年の
天皇賞(春)。前年の無敗の2冠馬
トウカイテイオーと、連覇を目指す
メジロマックイーンが激突した一戦である。
前哨戦の段階から、ファンの興奮は高まっていた。
トウカイテイオーの骨折からの復帰戦となった
大阪杯、最終追い切りで初コンタクトをとった岡部幸雄騎手は、自らが主戦を務めた
父シンボリルドルフに似ていることを明かし、「地の果てまで伸びていく感じ」と語った。そしてレースはほぼ馬なりで圧勝。圧倒的に強さを見せた3歳時から、さらに成長していることを示したのだ。
一方の
メジロマックイーンは、
大阪杯の3週間前の
阪神大賞典を圧勝。本番に向けて、着々と調子を上げていた。この頃からコメントが巧みだった主戦の
武豊騎手は、「あちらが地の果てなら、こちらは天まで昇れそうです」とリップサービス。ファンの盛り上がりに拍車をかけた。
そして迎えた本番、1番人気は1.5倍で
トウカイテイオー。
メジロマックイーンは2.2倍の2番人気。3番人気の
イブキマイカグラは大きく離れて18.2倍だから、まさに2強ムード。しかしレースはあっさりと決着がついた。
好スタートから中団につけた
メジロマックイーン。一方の
トウカイテイオーはラ
イバルをマークするように、2馬身ほど離れた位置を確保した。そして勝負所の3コーナー、
武豊騎手と
マックイーンが勝負をかける。逃げる
メジロパーマーをかわして早くも先頭へ。得意の持久力勝負に持ち込もうという策だ。そうはさせるものかと
テイオーと岡部騎手がついていく。しかし、一騎打ちムードは長く続かなかった。直線に向いて後続を突き放す
マックイーン。一方の
テイオーは距離が堪えたのか、脚色が鈍る。終わってみれば
マックイーンが2着の
カミノクレッセに2馬身半差の圧勝。
テイオーは1秒7差の5着に敗れ、デビュー8戦目で初黒星を喫することとなった。
トウカイテイオーはレースの10日後に右前脚骨折が判明。これがレースの走りに影響したのかどうかは、今となっては定かではない。一方の
メジロマックイーンも次走に予定していた
宝塚記念の前に骨折。ともに復帰し、さらにタイトルを重ねることとなるが、ファンが待ち望んだ2度目の対決は実現しなかった。もし
テイオーが無事だったら、仮に距離が2000mなら、どうなっていたのか。そんなことを考えながら、32年前の一戦に改めて思いをはせてみたい。