淀伝統の長距離G1「第169回
天皇賞・春」が28日、京都競馬場で行われ、1番人気
テーオーロイヤルが好位から抜け出し、G1初制覇を飾った。騎乗した
菱田裕二(31)、管理する
岡田稲男師(63)にとっても、うれしい
JRA・G1初制覇。人気を分け合った昨年の
菊花賞馬
ドゥレッツァは15着に敗れた。
パートナーを信じて動いた。勝負どころの下り坂で勢いに乗った
テーオーロイヤル。直線に入り堂々と先頭に立つと、菱田の右ステッキに応えて内ラチ沿いを粘り込んだ。人馬にとって初となるG1制覇のゴール。30度目の挑戦で
ビッグタイトルを手にした菱田は「本当に今まで生きてきた中で一番うれしい。言葉に言い表せないぐらいうれしい」と喜びを口にした。
昨春、
リニューアルした京都では最多となる6万人超の大観衆。それでも冷静に臨めた。「
ロイヤルはレース前の大きな歓声にも動じず、じっと歓声を聞いていた。集中していましたね」。スタートを決めて好位に取り付くと人気を分け合った
ドゥレッツァの背後を追走。2周目3角過ぎでラ
イバルをかわすと、直線手前で先頭に並びかけた。「後ろは分からないので一生懸命、追っていました。馬はまだ余裕がありましたけど、僕はそんなに余裕がありませんでした(笑い)」
G1の大舞台で1番人気に騎乗するのも初めて。「今まで味わったことのない、自分でもよく分からない感情にもなりましたけど、たくさんの応援やアド
バイスをもらって最後はシンプルな気持ちで乗れたと思います」。レース前日には先輩ジョッキーでもある四位師からアド
バイスも。「上り下りをどう意識して乗ったらいいか、アド
バイスを頂きました。そんなふうなイメージで乗れたし、いいリズムでした」と明かした。
鞍上にとっては特別なレース。20年前の
天皇賞・春当日、家族で京都競馬場を訪れた。当時は京都
サンガの下部組織に在籍していたサッカー少年。競馬場の雰囲気に衝撃を受け、騎手を志した。思い出の一戦で悲願のG1制覇。「4角を回って来る時に、20年前ここに見に来た自分に見といてくれという気持ちで乗っていました。あの時の自分にありがとうと言いたい」。この日は両親、妻と息子2人も応援に駆けつけ、レース後には夢を後押ししてくれた父とがっちり握手。「言葉は交わさなかったけど、目の前で勝てて良かったです。やっといいところを見せられたかな」
デビューから所属する岡田厩舎にとっても、うれしい
JRA・G1初制覇。岡田師は「“よくやった”と褒めてやった」と弟子を称える。開業22年目でのタイトルには「言葉にならないですね」と感無量の表情。
ロイヤルの今後については「まだまだ伸びしろのある馬だし変わりなく成長していってくれれば」と期待を寄せた。
菱田も「自分の常識では分からない、凄い馬」とパートナーを表現する。「これから
ロイヤルが活躍してくれると思うし、僕も負けないように技術を磨いていきたい。ここを通過点として、うまくなりたい」と意気込んだ。古馬の頂点に立った
ロイヤルと菱田の物語はまだまだ続いていく。
◆
テーオーロイヤル 父
リオンディーズ 母メイショウオウヒ(母の
父マンハッタンカフェ)18年3月6日生まれ 牡6歳 栗東・岡田厩舎所属 馬主・小笹公也氏 生産者・北海道浦河町の三嶋牧場 戦績18戦8勝(重賞4勝目) 総獲得賞金5億1826万6000円 馬名は冠名+王にふさわしい。
スポニチ