5月5日に東京競馬場で行われる
NHKマイルカップ(3歳牡牝・GI・芝1600m)。今年も3歳マイル王を目指して多士済々なメンバーが集まったが、同レースのファン
ファーレをNHK交響楽団(以下N響)が担当していることはご存知だろうか。また、同楽団が演奏していることは知っていても、N響の細部まで知っている競馬ファンは限られるのではないだろうか。そこで活動内容から入団方法、そして演奏へのこだわりまでN響に伺ってみた。
N響は1926年10月に新交響楽団の名称で結成、51年には日本放送協会(NHK)の支援を受けることが決まり現在の呼称となった。以降、年間54回の定期公演をはじめ、年間約120回のコンサートを全国各地で実施、また、社会貢献活動として、全国の学校や被災地、病院などで室内楽コンサートを行うなど、多彩な活動を行っている。
そんなN響が
NHKマイルCでファン
ファーレを演奏することになったのは06年のこと。経緯はどのようなものだったのだろうか。
「N響元理事長と日本
中央競馬会にご縁があったことや、NHKを冠としているレースということもあり、また、N響としても競馬ファンの皆様に演奏をお聴きいただく良い機会になるということから、ファン
ファーレ演奏を行うこととなりました。11年の東日本大震災の年に自粛のため中断したのち、14年から復活して今日に至ります」
また、ファン
ファーレを演奏するだけでなくレース当日はミニコンサートも開催。競馬ファンにN響の音色を届けている。ただし競馬という競技の特性上、通常の
コンサートホールなどとは異なり自然の影響はもろに受けることになる。「天候や風の影響には気をつけています。特に楽譜が風で飛んでしまうと演奏ができなくなってしまいますので、対策を施しています。また、少しの雨でしたら演奏は可能ですが、ひどい雨になってしまったため、ファン
ファーレの生演奏が残念ながら中止になってしまった年もあります」。それだけに毎年何とか晴れることを祈るばかりだ。
ファン
ファーレは全員が演奏しているわけではなく、東京競馬場に立つメンバーは選抜制となっている。「N響を中心に、年ごとにメンバーを選抜して決めています。人数が足りない場合は他の
オーケストラなどのメンバーに出演いただくこともあります」。では、そのN響に入るにはどうしたらよいのだろうか。
「N響に入団するには、楽器ごとに不定期に楽員募集が行われますので、そちらに応募ののちオーディションを受けていただくことになります。オーディションを受けるには
オーケストラにおける楽器演奏の相当な実力が必要となり、実際には音楽大学などで学んでいただき、
コンクールや他の
オーケストラなどで経験を積んでいただく必要があるかと思われます。管楽器に関しては、中学・高校の吹奏楽部出身の方たちも、多くの人がN響も含めプロの演奏家になっています」
最後に演奏するメンバーがファン
ファーレを演奏するうえでのこだわりを教えてくれた。
「ファン
ファーレによって聴衆の皆様の高揚感を促すような演奏をしたいと心がけています。クラシック音楽の演奏、レースに挑む騎手や馬、馬券を買われるお客様、みな“一発勝負”という共通点があると思いますので、その思いを皆様と共有できれば嬉しく思います」
レースはもちろんだが、ファン
ファーレも一発勝負。ぜひ、発走前の華麗な演奏にもじっくり耳を傾けたい。
NHK交響楽団
1926年10月に新交響楽団の名称で結成。51年には日本放送協会(NHK)の支援を受けることとなり、NHK交響楽団と改称。以来、今日に至るまで、世界一流の指揮者を次々と招聘、話題の
ソリストたちとも共演し、歴史的名演を残してきた。13年8月、
ザルツブルク音楽祭に初出演、20年春にはヨーロッパ主要9都市で公演を行うなど、その活動ぶりと演奏は国際的にも高い評価を得ている。現在、年間54回の定期公演をはじめ、全国各地で約120回のコンサートを行い、その演奏はNHKの放送を通じて国内外に広く紹介されている。また社会貢献活動として、全国の学校を訪問する「NHKこども音楽クラブ」、被災地や病院に安らぎと元気を届ける室内楽コンサートなど、多彩な活動を行っている。