2019年から21年に、
JRA賞の最優秀障害騎手に3度輝いた
森一馬騎手(31)=栗東・フリー=。22年は
石神深一騎手に2着回数の差で2位、昨年はケガで戦線離脱した影響もあって6勝止まりだった。だが、今年はここまで8勝で障害騎手リーディングトップ。連対率44・4%、3着内率61・1%と数字を見ても絶好調だ。
今年は森一騎手の師匠、松永昌博調教師が3月3日の競馬を最後に定年引退となったが、その前週の2月24日の小倉4Rで障害通算100勝を達成した。「1個1個の積み重ねの結果だったので、障害100勝の意識はそんなになかったのですが、セレモニーに松永昌博厩舎所属の
森一馬として、出ることができてよかった」と笑みを浮かべた。
「優しくもあり、厳しくもあり、馬乗りとしても、人としても育ててくださった」と感謝の念を持ち、厩舎解散後も松永昌厩舎のジャンパーを身にまとい、調教騎乗を続けている。「ずっとこの服を着ていきたいと思っています」。松永昌厩舎最後の重賞出走となった
かきつばた記念で、
ラプタスの手綱を執ったことからも、師弟関係の絆が強固なものであったことがうかがえる。
最近心がけているのが「日々の質を上げること」。以前はリーディングを取ることにガツガツしていたというが、「いまできることに対して、いかに準備をして臨めるか。食生活に気をつけて、寝る時間を確保して、すっきりと起きる。そういう状態で調教に乗ることを心がけています」と毎日の積み重ねを最も大切にし、自然体で競馬に乗る。これが今年の好循環を生んでいる。
熊沢重文騎手や北沢伸也騎手など、障害の一時代を築いた名手が現役を退いたが、若手騎手の障害参戦、さらに調教助手から転身した
ニューフェイスの
坂口智康騎手も加わった。「ラ
イバルだけど、みんなで障害レースを盛り上げていければ」と歓迎する。
先日には「福島で井上(敏樹)騎手にアド
バイスを送ったんです。そうしたら翌日に障害初勝利を挙げて…。そのレースは僕が2着だったんですけど」と悔しがりながらも、どこかうれしそうな表情を見せてくれた。
障害レースは怖いから見ない、というファンの声も聞かれる。1頭の馬が飛ぶことを覚え、騎手を信頼して障害に向かっていくようになるまでの過程は感動を覚えるが、その部分を競馬ファンに伝えるのは難しい。これは競馬マスコミの課題であることは私も認識している。SNSやネット記事などで、もっと障害レースの魅力に迫っていけたらと考えている。
「障害は1頭の馬、1人の騎手を追いかけるという見方をしても面白いと思います。毎週乗る騎手はほぼ同じですし、騎手の人数が少ないぶん、覚えやすいですから」と障害レース初心者に向けて呼びかけた森一騎手。今からでも追いかけて損はない、魅力的なジョッキーですよ。(
中央競馬担当・山下 優)
スポーツ報知