行った行ったの2頭による大波乱を「これが競馬の恐ろしさ」と実況アナウンサーは表現した。09年の
エリザベス女王杯はクイーン
スプマンテと
テイエムプリキュアで馬連10万超えの大波乱。“人気薄の逃げ馬は押さえよ”とは競馬でよく耳にする格言のひとつだが、大穴というのは得てして、先行の人気薄が残る場合が多い。15年の
ヴィクトリアマイルもその言葉通りになった。
筆者が超大穴で気になっていた存在こそ、単騎逃げもありそうだった
ミナレットの存在。最終的な印は本命
ストレイトガール、紐に
ケイアイエレガントで、あともう一頭を格言通りに拾っていれば……。
ミナレットは新馬戦でも14番人気で単勝121.9倍の人気薄ながら、2番手から押し切って大波乱を演出していた。3着同着となって3連単は2通りになったが、高い方の組み合わせは2983万2950円で、
WIN5を除く
JRA歴代最高配当記録。とはいえ、近走の成績は振るわなかった。前年暮れに
ターコイズSを人気薄で勝利していたものの、その後の3戦は14着、11着、5着。さすがにGIでは力不足との声が大半だった。
ヴィクトリアマイルで手綱を執ったのは、12年
日経賞の
ネコパンチや98年
日経賞の
テンジンショウグン、00年
スプリンターズSの
ダイタクヤマトなどで大波乱を演出した
江田照男騎手。稀代の穴馬×稀代の穴騎手に加えて、単騎逃げが見込めるメンバー構成。波乱が起きる下地は十分に整っていたと言える。
レースは抜群のスタートからハナへ。そして
京都牝馬S覇者
ケイアイエレガントが2番手。勝った
ストレイトガールは5番手の内に付けた。残り400mでも
ミナレットの逃げ脚はまったく鈍らず、
ケイアイエレガントでさえ詰めにかかるのにひと苦労。1ハロンを切っても後続とは十分すぎる距離があり、唯一追い込んできたのがマイル戦に勝ち鞍がなく、明らかにス
プリンターと思われていた
ストレイトガールだった。
典型的な前残りの結果。1番人気に支持された
ヌーヴォレコルト、2番人気の
ディアデラマドレはどちらかといえば中距離向き。さすがにマイルの距離でスローでは、スピード不足だったか後方に沈んだ。
5番人気-12番人気-18番人気での決着。GIや重賞はおろか、平場戦でさえ滅多にお目にかかることのない大波乱となった。
ミナレットの複勝は8500円。3連単は2070万5810円で、空前絶後のGI史上最高配当だった。
09年の
エリザベス女王杯で圧倒的1番人気に推されていたのは、強烈な末脚で同年春に牝馬クラシック2冠を達成した
ブエナビスタだったが、今年の
ヴィクトリアマイルで人気上位に推されているのも、
ナミュールや
マスクトディーヴァなど末脚を武器にしているタイプ。波乱の目があるとすれば逃げ、先行馬の前残りだが、果たしてファンをアッと言わせる快逃を披露してくれる馬は現れるのだろうか。