春の最強牝馬決定戦「第19回
ヴィクトリアマイル」が12日、東京競馬場で行われた。G1初挑戦でブービー14番人気の
テンハッピーローズが鮮やかに差し切り、鞍上の
津村明秀(38)ともども、うれしいG1初制覇。単勝2万860円はG1史上4位の高配当となった。4番人気
フィアスプライドが2着、1番人気
マスクトディーヴァは3着で3連単は91万6640円だった。
テンハッピーローズが先頭でゴール板を駆け抜けると、鞍上の津村は右手で力強い
ガッツポーズを決めて人さし指を突き上げた。「無我夢中でした。直線が凄く長く感じて必死に追ってました」。レース直後のインタビューでは涙。48回目の挑戦で念願のG1タイトルを獲得した苦労人は「ここまで本当に長くて。もうG1では勝てないかもしれないと思っていたが、それでも諦めたら駄目だと。どんな時でもなんとか乗れるようにと思いながらやってきた。たどり着けて良かった」と喜びを口にした。
鞍上の思いが通じた。直線残り200メートル、
テンハッピーローズが先に抜け出した
フィアスプライドに並びかける。勢いそのまま抜群の瞬発力を披露して抜き去ると、最後は1馬身1/4差。単勝200倍超の低評価が信じられないほどの完勝劇だった。
愛馬はこれがマイル初勝利。「元々掛かる面があり1400メートルの方がちょうど良かったが、近2走の走りから大丈夫そうだなと」と鞍上。管理する高柳大師も「ポテンシャルがあるのは分かっていた。人気はなかったけれど実力を示すことができて良かった」と高く評価した。今後は未定だが、この内容なら牡馬との対戦でも楽しみだ。
津村は競馬学校騎手課程の20期生。同期には川田、藤岡佑、吉田隼らのG1ジョッキーがいる。その中で卒業時に優秀な生徒に贈られるアイルランド大使特別賞を受賞した技術の持ち主だったが、
ビッグタイトル獲得までの道のりは長かった。これまでG1では
カレンブーケドールで挑んだ19年
オークス、
秋華賞、
ジャパンCでいずれも2着。何度も唇をかんできたが、ついに報われた。
「家族の支えが一番大きい。応援してくれている妻と息子2人が背中を押してくれた。帰ったらみんなを抱きしめたい」。この日、家族3人はJリーグ観戦に出かけている中、大黒柱が東京競馬場で
スーパーゴールを決めた。「(今日の勝利で)まだまだ勝ちたいという気持ちが強まってきた。またウイニングランがしたい」。マイルの女王に輝いた
テンハッピーローズと津村の物語はまだ始まったばかりだ。
◆
テンハッピーローズ 父
エピファネイア 母フェータルローズ(母の
父タニノギムレット)18年2月26日生まれ 牝6歳 栗東・高柳大厩舎所属 馬主・天白泰司氏 生産者・北海道千歳市の社台
ファーム 戦績24戦6勝(重賞初勝利) 総獲得賞金2億6885万3000円 馬名の由来は冠名+幸福+母名の一部。
◇津村 明秀(つむら・あきひで)1986年(昭61)1月5日生まれ、千葉県出身の38歳。美浦・鈴木伸厩舎から04年3月デビュー。06年
ラジオNIKKEI賞(
タマモサポート)で重賞初勝利。今年は
中山金杯、フラワーCに続いて重賞3勝目。
JRA通算1万1237戦653勝(重賞18勝)。1メートル68、51キロ。血液型O。
スポニチ