5月26日に東京競馬場で行われる第91回
日本ダービー(3歳・牡牝・GI・芝2400m)。世代の頂点を決める一戦に19頭が登録。この大一番をプロ予想家はどう見るか。数多くの
メディアで活躍しており、ついに今週より「
ウマい馬券」に参戦する予想家・立川優馬氏に、現時点での展望を伺った。
【お知らせ】
今週より立川優馬氏が「
ウマい馬券に」参戦! ぜひお気に入り登録をお願いいたします。
◆外を回す差し馬が間に合わず大波乱も
「レース質
マトリックス」(※立川氏が提唱する、馬単体の評価ではなくレース全体を予想し、決着型に合わせてねらい馬をピックアップする手法)において、ダービーがもつレース質は「内枠・差し」。その根拠は以下のとおりです。
・Cコース替わりで内の馬場がよい
・
オークスに比べると中盤が緩みやすく、馬群が凝縮するため差し有利。ある程度瞬発力が問われるので高速上がり経験は必須
・近年は高速馬場での実質スローペースが多く、道中内をロスなく通し、直線でブレーキ要素の少ない外目に持ち出す進路取りが理想
元々、東京芝2400mがもつレース質自体は「内枠・差し・スローペース」。直線を向いて進路取りをしてからの末脚比べになるので、上がり重視で人気馬が走りやすいコースです。
ただ、ダービーの場合、
皐月賞→ダービーの主たるローテが距離延長ローテになるうえに、
皐月賞はテンにタイトに流れるケースが多いため、結果的にダービーでもテンに流れることが多くなります。レースというのはテンに流れると中盤に緩むため、差し馬が押し上げて馬群が凝縮するタイミングができることで、差し有利により傾くというメカニズムになっています。
これを地でいったのが今年の
オークスです。本来は牝馬限定戦では最も長距離の芝2400mということで、流れてもテン5F60秒程度で入るのが例年ですが、今年は大逃げが入ってテン5F57.7というハイペース。離れた2番手グループで59秒台半ば辺りなので、そこでも例年の逃げ馬よりやや速いという流れでした。その結果、1400〜1800m地点で12.8-12.9-13.4と大きく緩み、馬群が凝縮したことで差し馬が台頭する流れになりました。
さて、「レース質
マトリックス」では、このようにレースがもつレース質やコースがもつレース質を基に予想を組み立てていきますが、最終的には「直近の傾向」によって微調整を図ります。この「直近の傾向」とは、馬場状態や天候、枠の並びにより隊列などを中心としており、よくトラックバイアスと呼ばれる要素もここの一部に当たります。
東京芝を語るに当たっては、近年の持続力寄りの馬場造成について触れないわけにはいかないでしょう。先週の
オークスの見解で、「Bコース最終週だから差しも届きやすい」というような内容をよく目にしましたが、これは半分正解で、半分不正解です。なぜなら、近年の東京芝はAコース開幕週から外枠差しが届くのが特徴でした。つまり、差しは届くけれど、それはBコース最終週だからではなく、近年の東京芝は元々差しが届きやすい馬場造成だったということです。
この点について、馬場傾向が如実に出やすい最短距離のレース、東京で言えば芝1400mの枠順別成績で確認してみましょう。
【東京芝1400mの枠順別成績】
○2018〜2020年
1〜4枠 勝率7.9% 連対率14.1% 複勝率21.4%
5〜8枠 勝率5.6% 連対率12.7% 複勝率18.8%
○2021〜2023年
1〜4枠 勝率5.1% 連対率11.8% 複勝率17.5%
5〜8枠 勝率8.0% 連対率14.8% 複勝率22.4%
このように、近3年とそれ以前の3年では傾向が大きく変わっています。近3年の東京芝は、これほど明確に持続力寄りで、内枠から
ギアチェンジ性能を生かして瞬発力で走る馬よりも、外枠からブレーキ要素なく真っ直ぐに吹かし続けられる馬が有利だったのです。
では、今年2024年の馬場造成はどうかというと以下のとおりです。
○2024年5月20日現在
1〜4枠 勝率10.4% 連対率17.9% 複勝率26.4%
5〜8枠 勝率5.0% 連対率12.1% 複勝率19.3%
近3年とは違い、内枠有利が顕著で、2020年以前の馬場造成に近いことが分かります。実際にラスト2Fが近年よりも速いレースが多く、内枠から距離ロスなく直線を向いて、坂加速の瞬発力で抜け出す競馬が多くなっています。
オークスを振り返っても、本来逃げ不利のレースで、実質ややハイペース逃げの位置にいた
クイーンズウォークや
ランスオブクイーンが3着と着差なしの4、5着に粘っていることや、直線でタイトに内の進路を選んだ
ステレンボッシュや
ライトバックが上位に来たのに対し、早めに外々をマクリ気味に進出した
スウィープフィートが間に合わなかったことからも、やはり今年の馬場自体は内枠有利であると見ます。
ましてやダービー週はCコース替わり。今年は、2019年に1枠から番手追走の
ロジャーバローズが勝ったときのような、ラチ沿い先行有利のレースになってもおかしくないでしょう。ちなみに、2024年の東京芝2400mでは1枠の複勝率は40%超。まず1枠に入った先行馬には注目したいところです。
今年のダービーでは
メイショウタバルがどの程度のラップを刻むかにもよりますが、少し離しての逃げになれば、離れた番手グループが最も恵まれるはず。そのことも考慮し、内枠に入ったときにねらいたい馬は以下の3頭になります。
○
ジャスティンミラノ 伸びずバテずの馬キャラで、自分の時計は堅実に走るタイプ。ハイペースの
皐月賞を5番手追走から削がれずに末脚を伸ばしきった経験から、自然に枠を出れば先行好位につける形になるはず。
共同通信杯では上がり3F32秒台の経験もあり、超高速馬場も苦にしないので、1番人気に応えるだけの要素はそろっています。
○
ミスタージーティー 伸びずバテずの馬キャラで、枠や馬場の後押しが必要なタイプ。こちらもハイペースの
皐月賞を先行して苦しくなりましたが、もう少し緩い流れを前受けする形なら粘りは違ってくるでしょう。前走の追走経験から内枠なら楽に番手グループにつけられるので是が非でも1〜2枠がほしいところです。
○
ジューンテイク 伸びずバテずの馬キャラで、自在性のあるタイプ。
京都新聞杯は高速馬場もあってテンに比較的流れたレース。相対的にスローに近い流れになりましたが、ここを先行して狭いラチ沿いを突いた経験は本番に生きてきそう。前走恵まれた印象が強い分、人気になりにくいでしょうが、今のところ1枠を引いたときには積極的にねらいたい一頭です。
当然、
皐月賞はハイペースで後続の脚が削がれる形だったので、そこで差して間に合わなかった
アーバンシックや
レガレイラは評価するところですが、その点は一般の競馬ファンも分かっていて、鞍上込みで人気を背負うでしょう。
であれば、内枠有利馬場に戻った今年のダービーは、内枠に入った先行好位勢で人気を落としている馬からアプローチしてみたいと考えています。
その際、逃げ先行馬が内枠にそろう内枠主導の隊列になった場合はさらにチャンスアップ。縦長隊列で、外を回す人気の差し馬が間に合わないパターンの大波乱も視野に入れてフォーカスを組んでみたいところです。(立川優馬)