安田記念の前日に当たる6月1日、東京競馬のメインレースで
アハルテケSが行われる。この特徴的なレース名は馬の品種に由来。アハルテケは黄金色に輝く美しい毛並みを持ち、世界に約3000頭しか存在しない希少種として知られる。そんな“幻の馬”の特徴や魅力について探った。
アハルテケは中央アジア南西部に位置するトルクメニスタンの原産。同国の歴史的
シンボルでもあり、国章にも描かれているほか、23年にはアハルテケ繁殖の技芸と装飾の伝統が、ユネスコ無形文化遺産にも登録された。
現在日本では青森県のアハルテケ長谷川牧場が唯一、同種の輸入と繁殖に取り組んでいる。日本にやってくるきっかけとなったのは、同牧場の長谷川百合子さんがアハルテケを訪ねてロシアや
エストニアを旅したときのこと。現地の関係者から生物学的、歴史的に見ても希少な種であることや感染症などへのリスクヘッジのため、海外でも繁殖を行いたいといった声を耳にしたことから挑戦を決めた。現在は同牧場で10頭が暮らしている。
その特徴についてサラブレッドとの違いをみてみると、体高はさほど変わらないものの、体脂肪率が低く細身な分、見た目には少し小さい印象を残す。首が長く胴に対してやや垂直ぎみに付いている点、尾やたてがみが薄くまだらなところなど、その違いは随所に見られるが、一番は美しい毛並みにあるといえよう。
“黄金の馬”や“幻の馬”とも称されるほど毛並みは金色に輝き、三国志に登場する「赤兎馬」の正体とする説もある。その多くはクリームがかった佐目毛(さめげ)だが、月毛(つきげ)や河原毛(かわらげ)の馬も多数。またサラブレッドでお馴染みの鹿毛も存在するほか、青毛のアハルテケも。いずれの毛色であっても、強い太陽光の下では
メタリックな光沢を発する。
長谷川さんはアハルテケの魅力について、「一頭、一頭の個性が豊かであること」と語る。アハルテケから積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくる部分は「とても楽しさを感じる」とし、「基本的に穏やか、かつ好奇心旺盛でフレンドリー。またどこか上品さも感じさせ、同じ場所、同じ時間を過ごすパートナーとして居心地の良い相手」とコメントした。
レース名にまでなるアハルテケ。
JRAではレースの名称決定時に「お客様にとって、なじみ深い競走名を継続すること」を大切にしている。美しい容姿だけでなく、気品ある立ち振る舞いでも人々を癒してくれる存在だからこそ、レース名としてふさわしいものだったのかもしれない。