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【安田記念】ソウルラッシュ100点 短く野太い首が加速力の源泉

スポニチ
  • 2024年05月28日(火) 05時30分
 ◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断



 無敵のパンチラッシュだ。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第74回安田記念(6月2日、東京)ではナミュールとともにソウルラッシュに満点を付けた。達眼が捉えたのは、元世界ヘビー級統一王者マイク・タイソンを想起させる「ずんどう首」。爆発的なパワーを生む極太の首で内外の一流マイラーをKOする構えだ。

 「魂の突進」(ソウルラッシュ)と名付けられた黒鹿毛が他と一線を画すのは並外れて太い首差し。その極太の首は36年前、竣工(しゅんこう)したばかりの東京ドームで目の当たりにしたマイク・タイソンを想起させます。統一世界ヘビー級タイトルマッチで元WBA王者トニー・タッブスに2回KO勝ち。リングサイドで見たタイソンの肩や胸の筋肉も凄かったが、驚かされたのは周囲50センチ超の「ずんどう首」です。攻守に欠かせない分厚い首の筋肉。相手をガードごとなぎ倒す桁外れのパワーの源泉を見た思いでした。

 馬は首を使って走るため、その形状は競走能力に直結します。スマートな長い首は加速に時間がかかる半面、重心を大きく移動できるので長距離に向く。反対にソウルラッシュのような少し短くて野太い首は消耗しやすい半面、加速力に優れているので短距離向き。タイソン級の「ずんどう首」はマイル戦で求められる加速力の源泉になっています。

 昨年(5歳時)、一昨年(4歳時)の馬体写真を見直してみると、ここまで太い首ではなかった。加齢とともに首の筋肉が発達してきたのです。タイソンはダンベルやバーベルを持ち上げて僧帽筋(首から肩、背中に広がる筋肉)を鍛えたそうですが、馬のタイソンは調教とマイル中心のレースに出走を重ねながら「ずんどう首」を身に付けた。首とともに肩、トモの筋肉も厚みを増しました。切れ味はナミュールにかないませんが、パワーはこちらに軍配が上がります。

 覇気に満ちた立ち姿。四肢で大地をしっかりとつかんでいます。鼻先をじゃれるように下唇にかぶせていますが、目つきや耳の立て方には集中力があります。ハミの受け方も良く、尾を気持ち良さそうに流している。漆黒の毛ヅヤが重厚感を増幅しています。少し太めの腹周りも今週のひと追いと、栗東から東京への長距離輸送でちょうど良くなるでしょう。

 東京ドームのこけら落としとなるタイトルマッチを圧倒したのがタイソンの「ずんどう首」なら、東京競馬場の今春最後のタイトルマッチを締めくくるのは…。パンチラッシュ(パンチの突進)が内外の強豪をまとめてなぎ倒すかもしれません。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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