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競走成績だけじゃない 顕彰馬選定への思い

スポニチ
  • 2024年05月30日(木) 10時30分
 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の万哲こと小田哲也(56)が担当する。日本ダービーが終わると、顕彰馬が発表される。新たに殿堂入りする馬は果たしているのか?読者も“有権者”になって、ぜひお考えください。

 日本ダービーが終わった。同学年の横山典の笑顔に心が洗われ、同時に勇気をもらった思い。財布はスッカラカンなのに、府中市内の夜の反省会が心地いい。また新たな競馬が始まる。

 ダービーの日に顕彰馬の記者投票も締め切られた。昨年新たに選定されたアーモンドアイなど、これまで35頭が殿堂入り。1年単位の成績で決まるJRA賞とも違う重みがある。僕も投票権をいただいていて、限度いっぱいの4頭の投票を済ませた。選定には投票者数4分の3以上(昨年は156票以上=投票記者数207人)が必要でハードルは低くない。22年は競走馬登録抹消後初めて投票対象になったG19勝馬アーモンドアイが落選。昨年は新たに投票対象になった3冠馬コントレイルが1票差(得票率74・9%)で選定外で物議を醸した。僕も22年のアーモンドアイに1票投じなかった(23年は投票)ので長く自問した。新たに投票対象になったのを失念したわけでなく、選定基準(別項)の(1)競走成績の最優先は承知の上で、(2)や(3)(個人的には特に(2)種牡馬や繁殖成績)も大切という思いだった。

 選考方法こそ時代によって変わってきたが、顕彰馬35頭は多岐に富んで納得のいく馬ばかり。例えば、ハイセイコー。今のグレードならG1級優勝は皐月賞宝塚記念の2勝だけだが、大井出身で社会現象になるほど人気を博し、種牡馬としてダービー馬カツラノハイセイコ皐月賞ハクタイセイを送り出した功績は絶大。8戦無敗のまま引退したマルゼンスキー(G1級勝ちは朝日杯FSだけ)も貴重な血を後世に伝えた。記者仲間とは「(1)と(2)(3)は別に選んでいいのでは?」とよく話す。成績だけで選定できない功労馬をピックアップするには一考の余地ありだと思う。

 今年投票した4頭は挙げておきます。昨年も投票したコントレイルは史上3頭目の「無敗3冠」が別格の価値。当時、矢作師は「シンザンに憧れてこの世界に入ったから、3冠に特別な思い入れがある」と熱弁を何度も聞かされた。コロナ禍で沈滞しそうになった競馬界を勇気付け、3000メートルは長いのを承知で逃げずに3冠を獲りにいった姿は顕彰馬にふさわしい。長く投票しているキングカメハメハは種牡馬として圧倒的な功績。間違いなく少数票だけど、ダイワメジャーは喉の手術を乗り越えG15勝、種牡馬として11年から今年まで14年連続重賞V継続中。そして、新たに投票対象になった障害絶対王者オジュウチョウサン。近日中に発表される選定結果を、レース発走前とも違う高揚感を持って待っている。

 ▽顕彰馬の選定基準 中央競馬の競走馬登録を受けていた馬で、

 (1)競走成績が特に優秀であると認められる馬

 (2)競走成績が優秀であって、種牡馬又は繁殖牝馬としてその産駒の競走成績が特に優秀であると認められる馬

 (3)その他、中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬(原文のまま)

 

 ◇小田 哲也 1967年(昭42)生まれ、埼玉県出身の56歳。趣味は旅打ちでJRAは函館、地方競馬は水沢、ボートは浜名湖、競輪は弥彦が好き。思い出の安田記念は07年、ドバイから帰国初戦で完勝したダイワメジャーの勝負強さに感動。グリーンチャンネル「中央競馬全レース中継」のパドック解説を担当中。

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