馬名はもちろん「甲斐の虎」武田信玄から。当初のオーナー、花木照人氏が武田家の末裔であるため、この名となった。
スポーツ紙的には大歓迎の馬名。いくらでも面白がれる。3勝目を挙げたのが「甲斐駒特別」。なぜか「負けようがない一戦だな」と思ってしまう。
初の中京(
中日新聞杯)で6着に敗れると「方角が悪すぎる。長篠の戦いで懲りていないのか」。初重賞制覇は
新潟大賞典。「越後で凱歌か。それは何より」。さぞ、信玄公も天国で苦笑いしていることだろう。
その
シンゲンの重賞2勝目がこのレース。
白富士S、
新潟大賞典と連勝しての臨戦で2番人気だった。1番人気は
ヒカルオオゾラ。本格化前の
アーネストリーもいる、なかなか骨っぽい一戦だった。
ショウナンラノビアがハナ。
シンゲンは中団で折り合った。直線を向き、馬場の悪い内を避けた
ヒカルオオゾラが早々と先頭に立つ。外からいい伸びを見せる
シンゲン残り50メートルで先頭に立ち、
ヒカルオオゾラを振り切った。
「正直、ここでは負けられないと思っていた。つかまえる自信はあった。はじけると思っていた」と藤田伸二。
戸田博文師は「手がかかる子ほど可愛いんだ。まだ伸びしろはあるよ」と、さらなる出世に期待した。
戸田師も歴史は好きなのだろう。その後の言葉が良かった。「越後(
新潟大賞典)、関東(
エプソムC)と来たからね。次は本丸を落としたいね」。秋の天皇賞のことだった。「これでいい見出しがつく」。全紙の記者がしっかりとノートに書き留めた。そして、翌日のスポニチの見出しはこうだった。
「さあ本丸 盾だ
シンゲン」
スポニチ