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【追憶の宝塚記念】12年オルフェーヴル 阪神大賞典の逸走乗り越えた 出来7割でもよみがえった最強馬

スポニチ
  • 2024年06月19日(水) 07時00分
 3冠、有馬記念2勝、宝塚記念凱旋門賞2着が2度…。改めてオルフェーヴルの成績を振り返ると、それはもう、まばゆいばかりだが、決して順調でスムーズな勝利ばかりではなかった。

 特に、4歳時の宝塚記念は苦難の末に何とかつかみ取った勝利。表現的には矛盾するが、苦労したからこそ、オルフェーヴルの地力の高さが浮き彫りとなった。

 苦難の始まりは同年(12年)阪神大賞典だ。オルフェーヴルはスタート直後から折り合いを欠き、2角過ぎで先頭に立ってしまう。そして2周目3角手前で突然、外ラチ沿いへ逸走。2着まで盛り返したが平地調教再審査を課せられた。

 この平地調教再審査がオルフェーヴルにとってしんどかったことは想像に難くない。栗東E(ダート)コース(当時)に入り、レースと同じ馬装(この時はリングハミとメンコ)を着用し、池添騎手を背に、コースの真ん中を真っすぐに走った。

 レースのようでレースでない。馬から見れば実に奇妙な、この平地調教再審査がどれだけ馬にとってストレスだったか。頭の中に「???」を重ねたオルフェーヴル天皇賞・春で11着に失速したのも、ある意味、当然だった。

 気持ちが乱れたオルフェーヴル。心が落ちれば体調も落ちる。宝塚記念への1週前登録こそ済ませたが、正式なゴーサインは出なかった。「トモの肉が物足りない。踏み込みにも強さがない。正直7割。時間が欲しい」。池江泰寿師は絞り出すように語った。

 それでも出走を決めた。オルフェーヴルに気持ちの強さが戻っていたからだ。追い切りではゴール後に勢い余って右にモタれた。野獣のような雰囲気が出始めた。

 レースでも気持ちの強さで突破した。外を回さず、イン突破に懸けた。ライバルの間を力強く割って突進し、2馬身差、完勝した。

 「やはり怪物。疑ってごめんなさい」。管理する池江師が最敬礼する、勝負根性にあふれた勝ちっぷりだった。

 池添謙一騎手は泣いていた。オルフェーヴルの首筋をなでると、頬を涙が伝った。「本当にきつかったが、本当に良かった。この馬が一番強いことを見せることができた」

 天皇賞・春で11着に敗れた時、「池添、もう下りろ」という声が聞こえた。もうG1に乗ってはいけないのではないか。いや、騎手をやめた方がいいんじゃないか。池添騎手はそこまで思い詰めた。

 だが、周囲の人々が懸命に励ました。思い直して放牧中のオルフェーヴルに合いに行った。決してオルフェの状態は良くなかったが、馬も励ましてくれたような気がした。

 その後、2度の凱旋門賞で池添騎手が騎乗する夢はかなわなかったが、ラストランの有馬記念では池添騎手が乗って8馬身差の圧勝劇を披露した。苦労の末に劇的に勝つ。やはりオルフェーヴルの背には池添謙一の姿が最も似合っていた。

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