94年の牡馬クラシックには不動の主役がいた。史上5頭目の牡馬3冠馬となった
ナリタブライアンだ。そして、その引き立て役だった馬にも
タレントは揃っていた。その代表格の1頭が
ヤシマソブリンである。
名門・松山康久厩舎に所属した
ミルジョージ産駒。クラシックの前哨戦では
共同通信杯4歳Sが4着、
弥生賞が8着、
スプリングSが5着に終わり、
皐月賞には出走できず。それでもNHK杯で2着に食い込み、
日本ダービーに参戦。10番人気の伏兵評価を覆して3着に健闘し、一気に脚光を浴びる存在となった。そして重賞初制覇を目指して挑んだのが、夏の福島を舞台とするラジオたんぱ賞(現・
ラジオNIKKEI賞)だった。
振り返ると、この年のラジオたんぱ賞は豪華メンバーだった。というのも、後のGI馬が2頭も出走していたからである。単勝1.7倍の1番人気は
タイキブリザード。
藤沢和雄厩舎の外国産馬で、
毎日杯2着の実績が評価された。3.7倍の2番人気は
オフサイドトラップ。
皐月賞で7着、
日本ダービーで8着の実力馬である。これに4.6倍の3番人気で続いたのが
ヤシマソブリンだった。
レースは前半1000mが59秒2の締まったペースで流れた。4角で馬群が固まって直線へ。好位追走の
タイキブリザードが先頭に立つ。これに襲い掛かったのが
ヤシマソブリン。激しい競り合いとなったが、最後は坂井千明騎手のムチに応え、
ヤシマソブリンがグイッとひと伸び。
タイキブリザードを半馬身競り落とし、初タイトルを獲得した。
ヤシマソブリンは続く
福島民報杯も快勝。
菊花賞では
ナリタブライアンには7馬身差を付けられたものの、2着を確保して世代ナンバーツーの座を誇示した。そして
タイキブリザードは3年後の
安田記念、
オフサイドトラップは4年後の
天皇賞(秋)を制し、それぞれGI馬となった。あれから30年、「史上最高」のラジオたんぱ賞に今一度、思いを馳せてみたい。