九州の馬産地と佐賀競馬に新しい風が吹いている。
6月18日、鹿児島県で行われた九州1歳市場で売却総額が過去最高の7290万円(税抜)を記録した。九州軽種馬協会の柏木務会長は「昨年、売却総額が過去最高でしたが、今年はそれを上回る総額で、生産者も喜んでおりよかったです」と話した。
最高価格は
スマイルヴィオラの2023(牡、父
ネロ)の760万円で、
北九州記念を制した
ヨカヨカの馬主でもある岡浩二オーナーが落札した。近年は他にも
イロゴトシが
中山グランドジャンプを連覇するなど、九州産馬の活躍に注目が集まっており、それがセリの活況にも繋がったと言えるだろう。
その会場でひときわ注目を集めたのは吉永彩乃氏。22歳の若手生産者で、今年、初めて生産馬をセリに上場させた。「実家では牛を飼っていて、子供の頃に祖父がポニーを飼ってきてそれに乗っていた」のが馬との出会い。その後、ジョッキーベイビーズでは九州地区代表として3度、東京競馬場での決勝レースに出場。
斎藤新騎手が優勝した2013年、
角田大和騎手が優勝した14年でともに3位だった。当時から「馬が大好きで、馬の仕事がしたい」と考えており、北海道の育成牧場で1年間働いたのち、実家のある九州に帰郷。いまは牛と繁殖牝馬を飼い、面倒を見る日々だ。
上場した
レモンソーダの2023(牡、
父スクワートルスクワート)が生まれた時は「(母馬が)朝ごはんを食べているな、と思って、次に見た時にはもう仔馬の脚が出ていました。スッと生まれてくれて安産。私は見守るだけでした」と振り返る。セリに向けては宮崎県の牧場に預けていたため、当日は「ちょっと見ない間に大きくなっていて、緊張します。可愛くて愛着が湧きます」と目を細めると、仔馬の晴れ舞台に向けてたてがみを三つ編みに結った。
迎えたセリは150万円で落札された。ハンマーが下りた瞬間、笑顔で一礼をした吉永氏。その後は見守った牧場や競馬関係者らから「おめでとう」「よかったな」と労われ、笑顔の記念撮影が行われた。
また、
ヨカヨカや
イロゴトシなど多くの活躍馬を送り出す本田土寿氏は近年、阿蘇地方に分場の高森ヒルズを建設。この日、上場された1歳馬たちは標高800mを超える分場で中期育成された1期生たちだった。「離乳前から分場で過ごしている1歳馬もいて、本場よりも広い分、運動量が格段に上がっています。お尻やトモのハリ、肩の出などが違いますね」と本田氏は手応えを掴んでいる。
こうして活気づく馬産地・九州をさらに盛り上げようと、佐賀競馬では今年、新たな重賞を実施する。11月4日JBC当日に2024九州産
グランプリ(地方全国交流、九州産3歳以上、ダート1800m)が組まれているのだ。昨年の佐賀
皐月賞を勝つなど佐賀競馬で活躍する
ネオシエルの生産者・吉野政敏氏の長男・新作氏は「競馬は順調にいくか未知な世界ですけど、生産馬が出走できればいいですね」と期待を寄せる。
また、佐賀競馬では一昨年から九州産限定の2歳新馬戦も開催している。今年もすでに1レースが行われ、「九州産馬の入厩頭数が激増とまではいきませんが、早い時期から揃っていると言えます」と佐賀県競馬組合総括監の生駒健一郎氏。九州産馬の一つの目標ともなっているのだろう。競馬ファンにお馴染みの九州産限定重賞・
霧島賞も今年は7月9日に行われる予定で、こちらも見逃せない。
九州唯一の
地方競馬として生き残った佐賀。初開催のJBCに向けて、同じ九州で生まれた馬たちとともに“九州魂”で盛り上げていく。
(文・大恵陽子)
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