今週の「夏の自由研究」功労馬編は地方でJpn2勝を挙げた
オースミイチバンを取り上げる。
エリザベス女王杯で2年連続2着の
オースミハルカの息子の現在の姿は。主戦だった川島信二元騎手(現在は栗東・
庄野靖志厩舎の調教助手)の妹夫婦が経営する三重県名張市の「Riding Club CARECA」で元気に過ごす様子を、玉木宏征記者が取材した。
13年の
ダイオライト記念などJpn2を2勝した
オースミイチバンは、愛と縁に導かれ今も元気に過ごしている。
母オースミハルカは04年、05年と
エリザベス女王杯で2年連続2着のほか、重賞を4勝した名牝。母の主戦だった川島信二・元騎手が、息子の
イチバンでも大仕事をして競馬のロマンを体現した。
14年5月9日で競走馬登録を抹消され、北海道日高町の白井牧場で乗馬になったが、同牧場の白井岳氏が馬主となり、16年にホッカイドウ競馬で7歳セン馬として現役復帰。6戦して4着が最高だったが、
JRA所属時と同じ500キロ超えのパワフルな馬体をファンに披露した。その後は再び白井牧場で乗馬となり、同牧場の新人スタッフの練習相手などを務めた。川島助手は「藤井勘一郎さんが(18年に)
JRAの騎手試験を受ける際にも、馬術の練習で乗っていたんですよ」とうれしそうに話す。
22年11月からは三重県名張市の「Riding Club CARECA」で引退名馬繋養(けいよう)展示事業の一環として余生を過ごす。同クラブは川島助手の妹夫婦が経営しており、橋渡しをしたのは川島助手だった。15歳になった
イチバンを主に担当する小藪かおりさんは「当初は環境の変化に戸惑っていました。1頭だと寂しがって鳴くんですが、隣の馬房にポニーの
レオナルド(5歳)が入厩してからは本当に仲良くしています。女性好きで、女性スタッフに触られる方が喜びますね」と笑い、今ではすっかりなじんでいる。
普段は疝(せん)痛を防ぎ、体が硬くならないようにフラットワーク(準備運動)や、たまに60センチぐらいの低い障害を飛んでいるという。馬休日は室内馬場で放牧したり、隣接する芝の広場で散歩をする。「草を食べたり、リフレッシュして喜びます」。
1日3食
ペレット(配合飼料)、ヘイキューブ(草のかたまり)、乾草などをしっかり食べる。おやつは馬用の
クッキーの黒糖味と
ニンジン味がお好みだ。運動後には水とふすまを混ぜた「ふすま湯」を飲み、腸を活発にすることで脱水症状と、やはり疝痛を防いでいる。
イチバンの3歳下の半弟で、
JRAで4勝した
オースミラナキラも同クラブで乗馬として活躍中。小藪さんは「2頭とも首を振って、ハエをすごく嫌がります。基本的には温厚ですよ」と、きょうだいの共通点を明かす。
和田竜二騎手がYouTubeチャンネル「引退競走馬を追う!」を開設するなど昨今、少しずつ引退馬に関心が向けられるようになってきたが、
イチバンの引退名馬繋養展示事業による補助金は月1万円という現状。同クラブ代表の梅田信さんは「理解されなければ淘汰(とうた)される世界。うまく循環していければ」と指摘する。
今回の取材を通して、
イチバンがスタッフに愛され、幸せに暮らしているのは一目瞭然だった。これから我々に何ができるのか。まずは
ニンジンをあげに、一緒に写真を撮りに同クラブを訪れてみてほしい。(玉木 宏征)
◇Riding Club CARECA(ライディング・クラブ・カレカ)三重県名張市の乗馬クラブで、甲南大学馬術部のコーチを務めていた梅田信さんと、妻の陽子さんが経営。前身の名張乗馬クラブを買い取り、22年4月にオープンした乗馬クラブ。2日現在、29頭を預託しており、半数は自馬会員からの委託。夫婦の他に従業員は3人。梅田さんは、Rubes
Japan株式会社の代表取締役も兼任。日本で唯一の『馬術競技専用』
グローブ「Rubes(ルーベス)」の企画、製造、販売を手がける。住所は三重県名張市夏見2586。定休日は火、金曜(祝日の場合も)。ホームページはhttps://ridingclubcareca.com/
スポーツ報知