【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、福島競馬場では
七夕賞(G3)が行われる。荒れることでも知られるこのハンデ戦を93年に制したのが
ツインターボだ。引退までに32戦した同馬は、G3こそ3勝したが、G1勝ちは皆無。それどころか3回のG1出走はいずれも2桁着順に敗れていた。
それでも今もこの馬の名が語り草になっているのは、その競馬ぶりが豪快だったから。最近では
パンサラッサ、さかのぼると
サイレンススズカもそうだったが、大逃げを打って後続にも脚を使わせ、一気に逃げ込みを図るタイプ。レースでは中盤からスタンドをざわつかせる馬だったのだ。
七夕賞を制した時も同様の走りだった。手綱を取ったのは
中舘英二騎手(現調教師)。タッグを組んだのはこの時が初めてで、次のように述懐する。
「他にも逃げ馬がいたし、大外の16番枠でもあったので、番手でも良いと考えていたのに、スタートが切られると
ツインターボが勝手に
ビュンビュンと飛ばして行きました」
そこでパートナーに譲る形で走らせた。すると道中で2番手に1秒以上つけた差は、最後まで大きく詰まる事なく、2着に4馬身の差を保ち悠々とゴールに飛び込んでみせた。
「口向きが悪い面もあり、紙一重というタイプでした。プランとしては瞬発力に欠けるので、上がりの脚から逆算して逃がした、という感じです」
続く
オールカマー(当時はG3)もコンビで優勝するのだが、そこには個性派としてのスピードを生かす名手の計算があったというわけだ。
さて、そもそもそういったレースぶりがハマった理由として、中舘調教師は次のように振り返る。
「口向きだけでなく、いろいろと少し難しい面のある馬でした。ラチにへばりついて離れなくなったり、馬場入りを嫌がったりもしました。また、ゲート試験にも何度も落ちている馬でした」
そんな気性が個性的な走りにつながり、彼を記憶に残るスターにしたのだろう。さて、今年の
七夕賞でも個性派が誕生するだろうか。期待したい。 (フリーライター)
スポニチ