7、8日に北海道苫小牧市のノーザンホースパークで開催された『セレクトセール2024』を現地で取材した。セリ会場では諭吉…もとい栄一が飛び交い(実際に札束は見えないが)、“億超え”乱発の熱戦が繰り広げられていた。高額落札が続いた
キタサンブラック産駒に、「昨年より4〜5倍くらい高くなっている…」と某調教師がつぶやいたのが印象的だった。
1歳部門と当歳部門を合わせて64頭の
ミリオンホースが誕生。昔は1億円を超えるとハンマーが下りた瞬間に会場内から拍手が沸き起こっていたが、近年は余韻に浸るシーンもなく、次の馬のセリが淡々と始まる。それだけ億超えが珍しくなくなったということだろう。
昨年を8億弱ほど更新する289億1800万円(以下全て税抜き)。売却総額は14年の125億7505万円から、10年間で2倍以上に膨らんだ。新型コ
ロナの影響を受けた20年を除き、右肩上がりに伸び続けているのは驚きしかない。しかも、今年はインドや中国の大富豪が下見に訪れるなど、海外バイヤーからも熱視線を注がれていたという。私の「円安の影響で注目度が上がっている?」の問いに、ノーザン
ファーム(以下ノーザンF)の吉田勝己代表は「関係ないですよ。純粋に日本馬全体のレベルが上がっているだけです」と言い切っていた。
ところで、個人的には桁外れの総売り上げと同じかそれ以上に気になった点が一つある。それは社台
ファーム(以下社台F)の躍進だ。例年はノーザンF生産馬ばかりが高額で取引されて目立っていたが、今年は様相が違った。
平均購買価格を比べると一目瞭然だ。販売者が1位ノーザンレーシング(以下ノーザンR)、2位ノーザンFで上場された1歳馬の平均価格はそれぞれ約7888万円と8797万円で、3位社台Fは8234万円だった。当歳部門は1位ノーザンRの同8178万円、2位ノーザンFの6606万円に対して、3位社台Fは8675万円と逆転している。
社台Fの関係者はこう分析する。
「生産馬の
ダノンデサイルがダービーを勝っただけでなく、今年は
ベラジオオペラ(
大阪杯)、
ジャンタルマンタル(NHKマイルC)、
テンハッピーローズ(ヴィクトリアM)とG1での活躍が目立ちました。今年のセレクトセールには今まで買っていなかった新しい人の参加もありましたし、その方たちが社台
ファームの勢いに乗ったというのが要因の一つとして考えられますね」
今年上半期のG1はノーザンF生産馬が3勝で、社台F生産馬は4勝。13年連続で生産者リーディングを獲得中のノーザンFに待ったをかけるのは、やはりラ
イバルの社台Fなのか-。今年6月には関西の新しい外厩である「社台
ファーム鈴鹿トレーニングセンター」が開場と、追撃態勢は着々と整っている。大きな流れの“転換期”に差しかかった可能性を感じた今年のセレクトセールだった。(デイリースポーツ・刀根善郎)
提供:デイリースポーツ