日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の新谷尚太(47)が担当。デビュー2年目のホープ
田口貫太(20)は今週末の騎乗終了後にフランスへ渡る。2カ月間の武者修行。海外競馬に肌で触れ、スキルアップの夏が始まる。
デビュー2年目の
田口貫太は今週の小倉競馬終了後、フランスへ武者修行に出る。1年目の昨年は年間35勝を挙げて
JRA賞最多勝利新人騎手を受賞。今年は
JRA30勝、515鞍の騎乗依頼数はトップだ。関係者からの信頼は厚い。6月12日に
関東オークス(
アンデスビエント)を制覇。待望の重賞初勝利を飾った。着実に
ステップアップしている。まずは今年上半期を振り返ってもらった。
「重賞を勝って、さらに勝ちたいという気持ちが強くなりました。いい馬に騎乗させてもらっている中で勝ち切れなかったレースの方が多い。騎乗に反省点の方が多いと思っています。現状に満足することなく、さらなるレベルアップを目指していきたいです」
向上心は人一倍強い。追い切り日ではない火曜から競馬に向かう直前まで栗東トレセンでひた向きに稽古にまたがる。日々の鍛錬で騎乗のスキルアップに取り組む。来週からはフランスへ。胸を躍らせる。受け入れ先は
シャンティイの
小林智厩舎。「小林調教師と親交のある助手さんが話をしてくださって、海外挑戦の機会をいただきました」と経緯を説明した。
デビュー当時から海外に興味を持ち、日に日に挑戦したい気持ちが高まった。「(師匠の)大橋先生に“行ってこい”と背中を押していただいた。僕がしばらく厩舎を抜けることで普段の調教でスタッフの方々に負担が多くなりますが、厩舎全体で応援してくださっています。その気持ちを強く持って、日々を過ごしたい」と意気込んだ。
現地では早く環境になじめるよう、寮生活を送る。現地スタッフとのコミュニケーションを最優先に考えた。「言葉に慣れる環境をつくりたかった。その中で馬への接し方や考え方など一つでも多く吸収したい」。新たな環境で競馬を見つめ直す時間を過ごす。「今は(挑戦する)ワクワク感が強い。2カ月の限られた少ない時間でアプローチを増やして多くの経験を積みたい。吸収できることは全て吸収して、成長した姿を見てもらいたいです」と強い決意を口にした。
うれしい知らせもあった。フランスでも競走馬を所有する犬塚悠治郎氏がSNSで所有馬の騎乗をオ
ファーした。憧れの“海外デビュー”もそう遠くはなさそう。真夏の果実を得て、また日本での騎乗を楽しみに待ちたい。
◇田口 貫太(たぐち・かんた)2003年(平15)12月10日、岐阜県生まれの20歳。23年3月4日に阪神でデビュー。競馬学校第39期生で同期に
石田拓郎、
河原田菜々、
小林勝太、
小林美駒、
佐藤翔馬がいる。父の輝彦さんは笠松競馬の元騎手で現調教師、母の広美さんも笠松競馬の元騎手。
JRA通算1110戦65勝。1メートル56、45キロ。
◇新谷 尚太(しんたに・しょうた)1977年(昭52)4月26日、大阪府生まれの47歳。18年5月から園田競馬を担当、同年10月に
中央競馬担当にコンバート。前職は専門紙「競馬ニホン」の時計班。グリーンチャンネル「
中央競馬全レース中継」のパドック解説を担当中。
スポニチ