函館競馬が先週で終わり、今週から北海道では7週間の札幌競馬が新たに始まる。開幕週を迎える札幌の芝生は例年通り、10〜14センチの芝丈にきれいにそろえられ、青々とみずみずしく生い茂っている。あとはレースを待つだけ、という状態だ。
芝の整備過程について札幌競馬場の沼田洋佑馬場担当課長に話を伺った。「まず散水には苦労しましたね。今年は春先の4月からあまり降っていなくて、6月も平年の半分ぐらいの降水量。雨は均一に全体的に降ってくれるので一番なのですが…。ス
プリンクラーや、散水車でダートの外側から芝コースに水をまいたりして対処しました。作業員さんたちみなさんが頑張ってくれて、なんとかいい状態で競馬を迎えられそうです」とホッと息をつき笑顔を見せる。
北海道の2つの競馬場だけで使われる洋芝。もともと寒冷地での育成に適していることで知られているが、「野芝に比べると洋芝って本当に繊細です。高温も駄目ですし、水分もそれなりに必要になります」と指摘する。毎夏のように更新されるような酷暑は、北の大地も例外ではない。23年の北海道地方の夏の平均気温は46年の気象庁の統計開始以降、過去最高を記録。さらに札幌では8月23日に36・3度と史上最高気温を記録した。
洋芝にとっては本来なら15〜25度が成育に適した気温だ。それに開催が進めば進むほど暑さは酷くなる。「暑過ぎると洋芝も生きようとするので、省エネの方に自分たちを振るんです。根っこを落として自分の体のサイズを落としてしまうんですね。病気になるリスクも上がってしまいますし、馬場が掘れやすくなると、その分馬場の悪化につながります」と管理の難しさを説明する。
将来的に、ますます暑くなるであろう札幌の夏。洋芝でこそ輝く馬たちがいることは頭に入れつつも、野芝への張り替えの可能性も模索していくべきかもしれない。「あくまで芝生を管理する立場からするとですけど、そういう議論の余地もあるかもしれないですね。野芝でやれれば、札幌開催の日数が増えて暑熱対策にも対応できるのかなとも思ったりもしますし」と沼田課長は言う。
それでもまずは「今年もジョッキーと相談しながら、そして天気予報を見ながら頑張ります」と、難しさもやりがいとして楽しむような熱意が伝わってきた。陰からしっかりと支えていく。
提供:デイリースポーツ