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【追憶のアイビスサマーダッシュ】08年カノヤザクラ スタート決めた、馬群さばいた、小牧太が輝いた

スポニチ
  • 2024年07月24日(水) 06時45分
 小牧太騎手がNAR(地方競馬全国協会)騎手免許2次試験に合格。8月1日付で地方騎手の免許再交付が決まった。

 いいことだと思う。“古巣”に帰るのは決して悪いことではない。

 21日のJRA騎手としてのラストデーでは最終12Rを12番人気馬で勝つミラクルも披露。さすがの勝負強さだった。

 「1次試験を受けます」という宣言を聞いた時、すぐに思い出したのは小牧が08年桜花賞レジネッタで勝ち、JRAでの初G1制覇を果たした時のことだ。

 翌週の栗東で、まずは「おめでとうございます」と伝えた後、勝った当日はどのくらい盛り上がったのかと聞いた。場所は大阪・十三。園田所属の頃、いつもいた場所で祝勝会を開いたという。

 「すごい多くの人が祝福してくれてね。最後は僕の知らん人までおったわ。それもええんちゃうかなって、ははは」

 小牧にとって、心の本拠地は園田なのだな、と思ったのだ。騎手人生も終わりが見えてきたところで“ホーム”に帰る。何か、理想的なように思えた。

 で、カノヤザクラだ。同馬は橋口弘次郎厩舎所属。小牧が、まだ地方所属だった頃、01年フィリーズレビューを同厩舎のローズバドで優勝。これが小牧にとってのJRA重賞初制覇となった。

 04年のJRA移籍後、小牧を主戦として遇したのも橋口氏だった。小牧は鹿児島県、橋口氏は宮崎県出身。「九州の人間は大事にしたくなるのよ」と橋口氏は常々、口にしていた。

 08年は前述の通り、桜花賞を勝ち、牡馬のクラシック戦線にはスマイルジャック(スプリングS1着、ダービー2着)という有力な相棒がいた。小牧が最高に勢いに乗っていた時期だ。そんな時に出合った快速牝馬がカノヤザクラだった。

 同馬の主戦は上村洋行騎手(現調教師)が務めていた。だが、スタートがいつも悪かった。ラストはいい脚を繰り出すのだが、大外を回らされるなどロスが大きく、前をカットされるなどの不利も受けた。

 08年アイビスサマーダッシュ。小牧は12戦ぶりに同馬にまたがった。芝1000メートル戦起用は初めて。ゲートが開く。五分のスタートを切った。

 5番手付近で流れに乗る。前にいたマルブツイースターの脚が鈍ったのを小牧は見逃さない。懸命のアクション。わずかな隙間に498キロの馬体をねじ込み、サープラスシンガーをかわした。必死に脚を伸ばすシンボリグランもしのぎ切った。「うまく出せたね」。汗びっしょりの小牧が笑った。

 ひと通りの会見が終わった後、小牧に聞いた。なぜ、カノヤザクラがあんなきれいなスタートを切れたのか。「人より早く出ようとするからダメ。一緒に出るくらいでいいかな、と思えば、慌てないのでちゃんと出られる」。平常心、心の持ちようが大事であることを強調した。

 このアイビスサマーダッシュの後、カノヤザクラセントウルSも小牧の手綱でV。G1制覇を狙って参戦したスプリンターズSは7着に散った。だが、勝ったのは同じ橋口弘厩舎のスリープレスナイト。同馬はCBC賞北九州記念を勝っていた。08年夏の短距離路線は、ほぼ橋口弘厩舎が独り占め。その一翼を担ったのがカノヤザクラと小牧だった。

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