“競馬に絶対はない”。目に見える数値だけで勝敗がつくなら単純計算で答えは出るが、馬も人も意思を持つ生き物で、出走各人馬のそれらが複雑に絡まり合い、レースそのものも生き物のように動いていくのが競馬なのだから、レース前にあるのは仮説だけである。それを頭の中で組み立てていくのが予想の醍醐味で、時に予想外の結果が出るのも競馬の面白さだ。
ただ、競馬に絶対はないが、「絶対王者」と呼ぶべき馬は時として現れる。
赤レンガ記念の圧勝を以て、
ベルピットはまさにそれにふさわしい存在になった。昨年はホッカイドウ競馬3歳三冠馬に輝き、それだけでも素晴らしい功績なのだが、
JRA重賞で入着歴もある
シルトプレ以下をまったく寄せ付けない走りを続ける今年の
ベルピットは、もはや地元三冠馬という枠に留まるレベルではない。
今回の内回りマイル戦が
ベルピットに最適な条件とは言えないが、同じ舞台である
北斗盃で勝利経験があるように、大幅なパフォーマンス低下には繋がらないだろう。2018年に
スーパーステションが、
コスモバルク記念から
道営記念まで続く一連の道営古馬重賞を全制覇したが、厩舎の後輩であるこの馬も、おそらく後に続くはずである。競馬に絶対はなくとも、今の
ベルピットに逆らう仮説を立てるのは困難だ。
焦点は2番手争いに移る。内回りマイルでの実績という点で、
グリントビートの名前をまず挙げておきたい。当時マイル戦だった一昨年の星雲賞覇者で、昨年のこの重賞でも2着と、舞台相性は折り紙付き。春からこの重賞を目標に使われてきており、ここに懸ける思いでは一番である。
ドテライヤツはまだ完調手前の印象だが、以前のように追い込み一手ではなく、最近は器用な立ち回りも見せている。このレース運びの上達は、内回り戦でプラスに働きそうだ。
佐賀から果敢に遠征してきた
アイリッシュセンスは、小回りコースに慣れており、現在リーディングである
石川倭騎手が鞍上という点も心強い。立ち回りひとつでは、混戦の2番手争いで浮上する目もあるだろう。
(文:競馬ブック・板垣祐介)