祖父が元調教師、父は助手と競馬一家に育った
大江原比呂騎手(19)=美浦・武市厩舎=。今年3月のデビューから5か月、着実に成長を続けるルーキーに、初勝利の喜びから「よくボウリングに行きます」という同期との交流まで、「夏の自由研究」女性ジョッキー編として話を聞いた。(取材・構成、角田 晨)
今年3月にデビューした大江原比。ここまで
JRAで142戦してきたが、やはり一番うれしかったのは自厩舎の
ズイウンゴサイとともにつかんだ初勝利(6月9日、東京4R・3歳未勝利、芝2400メートル)の瞬間だったという。
「普段の調教から乗っているんですが、本当に手を焼いてた馬で…。何回か落とされているから喜びも格別でした。生産者の方にもお世話になっていて、その馬で勝てたのもよかった。ゴールの瞬間は勝ったのかも分からなくて、着順掲示板の表示が出たときはうれしかったですね」
藤田菜七子騎手のレースを見て志した騎手の世界。もともとは別の競技で全国大会にも出場し、トップを目指していた。
「幼稚園に入る頃から器械体操をやっていて、将来はその選手になると思っていました。内村航平さんに憧れていたんです。平均台が得意でしたね。そのときに鍛えた体幹は、ジョッキーの仕事でも強みになっていると思います。競馬はあんまり興味がなかったんです。乗馬は小学4年生からやってましたけど、父(蛯名正厩舎所属の勝助手)の馬のレースもほとんど見たことなくて」
だが、今では馬と触れ合うことがなによりの楽しみになっている。
「本当に馬に乗るのが好きなので、休みの日は牧場に行くことが多いですね。厩舎でも、武市先生と馬のかわいさについてよく話しているんです。先生は誰にでも謙虚で、本当に素晴らしい方だと思います」
時には同期と共に若者らしい遊びでリフレッシュすることもあると、はにかみながら語る。
「石神(深道)とボウリングによく行きますね。この前も8ゲームしました。彼はすごくうまくて、200とか出すんですよ! 私は150くらい。カーブとかかけ方が分からなくて、全部ストレートで投げてます(笑い)。あと、最近はダーツもやってます。狙ったところには投げられないですけど…。同じものを投げないと感覚が狂うので、マイダーツも買いました! 集中力が鍛えられるんで、仕事にも生きているかなと」
6月29日の福島6R・2歳新馬(ダート1150メートル)では
ラインパシオンに騎乗し2勝目をマーク。同馬と共に
函館2歳Sで重賞初挑戦を果たすなど、着実に成長を続けている。女性離れしたダイナ
ミックなフォームは、今後ますます注目を集めることだろう。
「全然まだまだ技術がないからバタバタしているだけです。2勝目も馬の力で勝たせてもらっただけですし、もっと関係者の方の信頼を得られて、先輩方と同じステージに立てるように頑張っていきます!」
祖父・哲さんとゴルフでラウンドするのが夢
普段の取材から、厩舎に足を運ぶと「わざわざ来ていただいてありがとうございました」と頭を下げる丁寧な
大江原比騎手。競馬を語るときはまだ緊張した面持ちで言葉を選ぶが、趣味の話になると19歳らしい生き生きとくだけた表情になる。最近は哲さんに影響されてゴルフを始めたようだが、「一緒にコースを回るのが夢なんです」とうれしそうに話す様子はまさに「目に入れても痛くない孫」と言ったところだ。
豪快な追いっぷりとギャップのあるその姿は、厩舎の雰囲気にも支えられている。師匠の武市調教師は我々
メディアに対しても常に丁寧に優しく対応。スタッフも朗らかな人が多く、
大江原比騎手とともに馬を囲んで談笑しているさまはまるで家族のよう。厳しい勝負の世界でも、おおらかに成長し続けてほしい。(角田 晨)
◆大江原 比呂(おおえはら・ひろ)2004年8月17日生まれ、19歳。茨城県出身。祖父・哲さんは元騎手で元調教師、父・勝さんは調教助手、父のいとこは騎手の圭と、競馬一家に生まれる。24年3月2日、中山1Rでデビュー。6月9日、東京4Rで初勝利をマーク。7月13日の
函館2歳Sで重賞初騎乗(13着)。
JRA通算142戦2勝。同期は
高杉吏麒、
長浜鴻緒、
吉村誠之助ら。155センチ、48キロ。血液型B。
スポーツ報知