JRAが暑熱対策として、今年の夏の新潟競馬で2週間、特に気温の高い昼間に約3時間半の“休止期間”を導入した。デイリー
中央競馬取材班は、ファンや関係者が何を感じ、どう行動したのかを緊急取材。その証言を通じて、さまざまな角度から迫った。
連日、猛暑が続く日本列島。
中央競馬でも従来のミストなどに加え、新たな暑熱対策が実施された。新潟競馬で競走時間帯を拡大し、特に気温の高い時間に3時間半強の休止時間を設けた。装鞍所への集合時間を従来の50分前から40分前に変更し、下見所の周回時間も短縮。日本調教師会副会長の庄野師は「年々、暑さが増しているし、まずは人馬の安全を守ることが大事。そこを第一に考えて開催を進めるべきでしょう」と力を込めた。
競馬場での昼休みのファンの過ごし方はさまざま。パドックウォークに参加したり、場内のイ
ベントで盛り上がったり、スタンド内で札幌競馬の馬券を買ったりと思い思いに楽しんだ。パドックウォークは最終的に1時間20分で1830人が参加。新潟在住の男性ファンは「内を見る機会はなかなかない。楽しかったです」と大満足だった。
ただ、3時間半の昼休みは長いと言う声も少なくなく、既に「暇過ぎて困ります。この時間をどうするか考えています」との声も上がっていた。パドックウォークも今は始まったばかりで新鮮だが、継続していくうちに興味が薄れる可能性も。ファンが楽しんでくれている間に、次の手を考える必要はありそうだ。
では、ジョッキーはどう感じたのか。戸崎圭は「難しいと思ったのはエネルギー補給です。普段は軽食で済ますけど、1Rから12Rまでの時間がかなり長くなりましたしね。食事の内容と取るタイミングの判断は難しかった」と率直な胸の内を明かす。「でも、そこは今回が初めてだったし、感覚をつかんでいけば問題ないと思っています」と前向きに受け止めた。
永島まなみは「先週の土曜日は5Rのあと11Rに乗せていただきました。時間が5時間ほどあいたので4時間睡眠にあてました。他のジョッキーも睡眠を取ったり、マッサージを受けている方がいましたね」と、各自が必要なケアに時間を費やしていたと教えてくれた。「人間側からするともう少しギュッと詰まってくれた方がいいかなと思いますが、馬にとっては暑い時間を避けられるのはいいこと。時間があくことで集中力が切れたりというのもなかったですね」と大きなマイナスにはならなかったようだ。
一方、松岡は「暑熱対策としては0点。3時間あけたくらいで暑熱対策になるのか。結局、メインレースは暑い時間帯にやるんでしょ?そんなことをしてまで馬券を売りたいのなら、函館と札幌の2場開催にすればいい。もっとほかにできることがあるのではないのか」と厳しかった。暑熱対策はすべきという意見が大半だったが、やり方にはまだ改善の余地があるだろう。
調教師、助手、厩務員の意見も記したい。日曜新潟11Rで勝った
エマロア担当の平田厩舎・高阪助手は「馬房にはクーラーもついているし、扇風機も持っていったので待機時間も涼しく過ごせた。何よりも歓迎だったのはレース前の装鞍所の集合時間が50分前から40分前になったこと。10分の違いは大きい。お客さんには申し訳ないけど、それに伴ってパドックでの周回が短くなり、馬のイレ込みも少なくなったからね。それは他の厩舎の人含めて、みんなが言っていた」と喜んでいた。
某厩務員からは「もしもイレ込む馬が最終レースに使うことがあったら大変。長い間、ずっとイレ込んでいたらさすがに力を出せませんから。そういうところは考えないといけませんね」という訴えも。ある調教師からは「新潟はパドックも暑いから。屋根付きにした方がいい」といった声や、「装鞍所の集合時間が40分前と短くなったのは馬にとってはいいけど、立て続けにレースを使う場合は次のレースの臨場に調教師は間に合わない。メリット、デメリットがあってまだ評価は難しい」と意見は分かれた。
今回の暑熱対策は、大きな一歩ではあるが、まだ始まったばかり。全人馬にとっての“正解”はないのかもしれないが、今後も議論が尽くされ、より最適な形を模索していくべきだろう。2週目となる今週末、そして来年以降の動向を注視していきたい。
提供:デイリースポーツ