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小倉記念を唯一連覇したメイショウカイドウは現在、滋賀県で余生 滋賀や京都のお祭りに年15回「出演」する人気者

スポーツ報知
  • 2024年08月06日(火) 06時05分
 今週行われる小倉記念・G3(11日、中京)を連覇した馬が今までただ一頭いる。04、05年のメイショウカイドウ(セン25歳)だ。07年の引退後、長らくJRAの施設で管理されていたが、21年春から滋賀県豊郷(とよさと)町の大野牧場で余生を送っている。もともとは酪農牧場。牛との共存という珍しい経験もあり、今は地元のお祭りに参加する「人気者」の一面も持つ。かつての個性派ホースを「夏の自由研究」功労馬編で取り上げる。

 悠々自適に毎日を過ごしている。栗東トレセンから車で約1時間。25歳になったメイショウカイドウは約6年半の競走馬時代を過ごした滋賀県に戻っていた。田んぼと畑に囲まれ、牧歌的な雰囲気が漂う大野牧場にやって来たのが21年春だ。「うちが死ぬまで大切に育てていると聞いたJRAさんから、どうですかと打診がありました」と代表の大野知成さん(36)。乗馬を引退した高齢馬を中心に5頭ほどの面倒を見る。

 仕事はまだある。“主戦場”は週末に滋賀や京都で行われる地元の祭り。宮司や小さい子供を乗せてゆったり歩くことが中心だが、時には流鏑馬(やぶさめ)で走ることもある。当然、体調が最優先で猛暑の今はお休み中。10〜5月の間に15回ほど参加していて、今年も10月13日に京都市伏見区の御香宮神社で行われる「神幸祭」から再開する予定だ。

 体は少し丸みを帯びたが、歩く姿は年齢を感じさせない。「競走馬はグンと行く馬が多いけど、3歳の子が乗れば合わせるようにゆっくり歩くし、要求に応じて駆け足にもなります。反響も大きいです。参加すれば来てくれる、追っかけの方もいます」と笑みを浮かべる。

 未知との遭遇もあった。もともと大野牧場は酪農牧場だったが、約50年前から引退馬の世話もするようになった。カイドウが最初に入った馬房は牛舎のそばで、牛と“ひとつ屋根の下”。間近に顔を見ることもあれば、搾乳時には鳴き声も聞こえる。しかし、動じなかった。「落ち着いていましたね。音も大丈夫でした」と大野さん。約1年半前に酪農をやめ、現在は馬だけを世話。牛の防疫上の問題で見学は断っていたが、今後は秋を視野に見学も可能な方向で考えている。

 小倉記念連覇など重賞5勝を挙げた名馬だが、競馬にほぼ関心がない大野さんは現役時代の雄姿を知らない。しかし、昼間の仕事をしている平日も朝5時の比較的涼しい時間帯に放牧地へ送り出すなど、できる限りの世話をする。「馬が好きだからでしょうね。カイドウが来ると聞いた時も『そうなんや、すごい馬が来るな』と思ったぐらいでした。のんびり暮らしてますよ。どんな馬もですが、最後までしっかりと大事にしたい」。穏やかな空気の中にあふれる温かい愛情。かつて小倉の鬼と言われた個性派は、幸せな余生を送っている。(山本 武志)

 <07年引退→小倉で誘導馬→18年福島で訓練用乗馬>

 メイショウカイドウは現役を退いた翌年の08年から小倉で誘導馬となったが17年に引退。その後は18年から福島県いわき市にあるJRAの競走馬リハビリテーションセンターで厩務員を目指す研修生の訓練用乗馬になった。

 センターの当時の所長で、03〜06年の現役時代に獣医師としても接していたのがJRAの塩瀬友樹さん(現・総合企画部経営企画室)。「訓練の後に温泉で疲労が取れるということで福島に来ました。優しいおじいちゃんという感じでしたね。すごくファンの方も来ていましたよ」と振り返っていた。

 ◆メイショウカイドウ小倉記念連覇 栗東・坂口正大厩舎所属で5歳だった04年は1番人気で出走し、好位追走からの横綱相撲で1馬身差の完勝。重賞初タイトルをつかんだ。6歳だった05年は58.5キロのトップハンデで、今度は後方からの差し切り。いまだ一頭しかいない連覇を達成した。また、この年は小倉大賞典北九州記念(当時は芝1800メートル)も勝っており、史上初の同一年小倉3冠、06年には七夕賞(福島)を制し通算で重賞5勝を挙げた。

 ◆大野牧場 滋賀県豊郷町にある引退馬牧場。1870年に開業し、当初は酪農牧場だったが、約50年前から引退馬も引き受けるようになった。小さな放牧地もある。22年10月に酪農から撤退。ピーク時は乳牛25頭、馬が13頭ほどいた。高齢馬が多いため、カイバは固いものを避けたり、人参などは細かく刻んだり工夫している。

スポーツ報知

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