JRAの短期免許第1号となったL.クロップ騎手が、1994年6月25日に
JRAで初騎乗してから、今年でちょうど30年となる。これまでにのべ70人以上の名手が海の向こうから来日し、日本の競馬を盛り上げてきた。そんな短期免許を取得したジョッキーたちの軌跡とは。L.デットーリは世界を股にかけ、G1だけで300勝近くを挙げている歴史的名手だ。
デットーリ騎手は70年12月15日、イ
タリア・ミラノの生まれ。彼のキャリアをひと言で表すなら「生きる伝説」。15歳のときに同国で初勝利を挙げると、めきめきと頭角を現し、特に90年は
マークオブディスティンクション(Markofdistinction)でクイーンエリザベスII世S(英G1)を勝利するなど、年間141勝をマークした。
94年にはゴドルフィンの主戦に抜擢され、欧州を中心に世界各国の
ビッグタイトルをつぎつぎに獲得していく。96年9月28日には
アスコット競馬場で全7レースを勝利。00年には小型飛行機の墜落事故に巻き込まれるが、2カ月後に復帰して再び勝ち星を量産する。これまで
凱旋門賞6勝、英ダービー2勝、
ドバイWC4勝。気づけばGI勝利数は300近くに達している。
日本での騎乗経験も豊富で、また実績も素晴らしい。91年の
ジャパンCで初来日すると、92年、93年にはヤングジョッキーズ
ワールドチャンピオンシップに参戦。92年の同シリーズで
JRA初勝利を挙げたほか、93年には4戦3勝の成績を残し、国内のファンや関係者に衝撃を与えた。
その後もたびたび日本を訪れ、
ジャパンCは、96年
シングスピール、02年
ファルブラヴ、05年
アルカセットの3勝。02年には、土曜に行われた
ジャパンCダートを
イーグルカフェで勝ち、翌日の
ジャパンCを前述の
ファルブラヴで制す“2日連続の
JRA・GI勝利”もあった。ちなみに短期免許を取得しての騎乗は11年5月が初めて。この時は
日本ダービーで
デボネアに騎乗し12着だった。
そんな名手は今年の暮れで54歳を迎える。一度は23年限りでの引退を表明したが、最終的には欧州を離れ、アメリカ・サンタ
アニタを拠点に現役続行を選択。今年3月には、
ニューゲート(
Newgate)に騎乗してサンタ
アニタハンデ(米G1)を制すなど、変わらずの活躍を見せている。代名詞となった“デットーリジャンプ”(フライングディスマウント)も健在。現在、53歳と大ベテランの域に入っているが、衰えは微塵も感じない。
再び日本で騎乗する機会はあるだろうか。
JRAでの短期免許取得は19年が最後となっている。キャリアを終える前に、もう一度その姿を目に収めたいと思っているファンは多いはずだ。陽気なキャラクターと、華麗なテクニックで見る者を魅了する“世界の
フランキー”。1日でも長く現役を続け、これからも競馬ファンに笑顔を届けてほしい。