「夏の自由研究」女性ジョッキー編は、21年にデビューした
古川奈穂騎手(23)=栗東・矢作厩舎=を紹介する。度重なるけがにもめげず、強い気持ちで戦い続けている。「一勝ずつ」を積み重ねて、
JRA女性騎手歴代4位の47勝。競馬にストイックな一方、“推し”への愛にあふれる一面も魅力的だ。
鼻骨と両頬の骨折で、約1か月半休養していた古川奈。6月15日の函館8Rで騎乗馬が暴れて顔面を負傷し、同月末に手術を受けたが、復帰初週の7月28日、札幌2Rで復帰後初勝利を挙げた。
「結果が出て良かったなと思います。一つ勝ってまた次というように、一つずつ勝ち星を伸ばしたいですね」
昨年12月には左鎖骨を骨折し、2か月半の戦線離脱。ルーキーイヤーの21年5月には左肩を手術し、半年間休養した。競馬学校でも脱臼や骨折を経験。何度けがをしても、心は折れなかった。
「(馬に乗るのが)怖くなることはありませんでした。競馬学校から、気持ちだけでやってきたような感じです」
幼少期から本格的に乗馬を習っていたわけではない。高校1年時に競馬学校受験を決意するまで、ジョッキーという職業は意識しておらず、将来の夢は別の仕事だった。
「
JRAの職員さん。競馬関係ならそこかなと思っていました。動物が好きだったので、獣医さんも考えていましたが、私は理系じゃないな、と高校で気付きました」
見事難関を突破し、栗東・矢作厩舎からデビュー。世界中で活躍する師匠や、若手スターの兄弟子・
坂井瑠星が身近にいる環境で、研さんを重ねてきた。なかでも印象的な相棒は、通算17戦でコンビを組んだ
ステイブルアスク(※)。
「スピード、しまいの脚があったんですけど、なかなか生かし切る競馬ができなかったです。うまく乗れれば、もっと上でもやれたんじゃないかな。馬の能力に助けられていたと思います」
競馬に対してはストイックだが、オフは若者らしく、“推し活”に熱中する面もある。
「(推しは)福山雅治さん。自分の好きな写真を入れてキーホルダーを作る、というのをネットで見かけて、それを作るために、百均をはしごしています」
JRAの職員になりたかった少女が、今は女性騎手として勝負の世界で戦う。何よりのやりがいは、勝利と周囲の笑顔だ。
「やっぱり勝つときや、関係者の方に喜んでもらえたときが一番うれしいです。やってて良かったなと思います。この世界に入って、一つ勝つことの大変さを分かると、関係者の方に喜んでいただけるのが一番です」
(水納 愛美)
※
ステイブルアスクは、栗東・矢作厩舎に昨年末まで所属し、3勝した牝馬。古川奈は21年4月のデビュー戦(12着)など全24戦中17戦で手綱を執り、2勝、2着5回だった。
◆古川 奈穂(ふるかわ・なほ)2000年9月13日、東京都生まれ。23歳。21年3月に栗東・矢作厩舎からデビューし、同月13日の阪神6R(
バスラットレオン)で初勝利を挙げる。
JRA通算47勝。同期は美浦の永野、横山琉、栗東の小沢、角田和、永島、松本。154・6センチ、44・8キロ。
「
ガリレオ」衣装のアクスタと
ミスガリレオアスクを撮影 推しのことになれば“普通の”23歳
古川奈騎手はおしとやかな雰囲気をまとうが、ハートは鋼のように強い。デビューから何度もけがを経験し、今回は顔面を骨折。トラウマになってもおかしくないのでは? と聞くと、「意外と…」とあっさりしていた。「ゲートの中で人間が硬くならないように、先輩方からも、所作についてもう一回アド
バイスをいただきました」。負傷すら学びに変える姿勢は、尊敬するばかりだ。
だが、推しのことになれば“普通の”23歳だ。5月に矢作厩舎で
ミスガリレオアスクを取材した際、彼女も同馬を撮影。一緒に写していたのは、テレ
ビドラマ「
ガリレオ」の衣装を着た福山さんのアクリルスタンドだった。ファン歴は小学校高学年からで、好きなところは「全てです」ときっぱり。競馬にも推しにも全力な姿は、人間的な魅力にあふれている。(水納)
スポーツ報知