管理した伊藤雄二調教師いわく、「才能をビカビカッとまき散らして歩くような馬」だった。
ピカピカではない。「ビカビカッ」である。数えきれぬほどの重賞勝ち馬を管理した名調教師に、ここまで言わせる牝馬。それが
ファインモーションだった。
その名牝が最後の輝きを放ったのが04年
札幌記念だった。デビューから5連勝で
秋華賞を制し、6連勝で
エリザベス女王杯を手にした才女。
エリザベス女王杯の単勝配当は何と120円だった。
そのスーパー牝馬がスランプに陥る。02年
有馬記念(5着)から4連敗。03年
阪神牝馬Sは57キロを背負いながらも、意地を見せて白星をつかんだが、次走の
安田記念で13着惨敗。メンバーに恵まれた感のあった
函館記念でも2着に敗れていた。
迎えた
札幌記念。
武豊騎手は勝負を懸けた。最後方待機。折り合いをつけ、
ファインモーションをひたすらレースに集中させて、最後の爆発力を引き出す。「勇気がいる作戦だが…自分の考えを貫こうと思った」(
武豊)。
11頭立ての最後方11番手。「
ファインモーションは最後方を進んでいます」。場内実況にスタンドがどよめく。だが、折り合いは完璧についていた。残り600メートルを切って外から動く。中団の各馬をあっという間にかわして4角5番手。前を照準に入れた。
「賢く、しっかりと折り合っていたからね。直線を向いた瞬間に勝てると思いましたよ」(伊藤雄師)。
ファインモーションはうなるように伸びた。先に抜け出した
バランスオブゲームを苦もなく捉える。
武豊の左手が上がった。G2では珍しい
ガッツポーズ。喜びが体を突き動かした。
「この馬で負けたくない。輝きを取り戻すことができたかな」(
武豊)。
ファインモーションにとってこれが最後の勝利となったが、
札幌記念の歴史に刻まれる素晴らしい輝きだった。
スポニチ