新たなモデルケースになるかもしれない。21日に行われるインターナショナルS・G1(英ヨーク、芝2050メートル)に昨年の
菊花賞馬
ドゥレッツァが参戦する。日本調教馬が同レースに出走するのは、05年
ゼンノロブロイ(2着)、19年
シュヴァルグラン(8着)に続いて3回目となる。
夏のこの時期の海外遠征は、これまであまり見られないパターンだ。しかし、
ドゥレッツァ陣営にははっきりとしたビジョンがある。尾関師は「秋の目標として
ジャパンC(11月24日・東京)があります。そこに向けてのレース間隔なども踏まえ、いろいろなものをオーナーと協議した上で“行こう”ということになりました」と説明する。
古馬が
ジャパンCを目標にする際、
天皇賞・秋を
ステップレースに選ぶことが多い。ただG1で厳しい競馬になる上、レース間隔は1カ月しかなく、ベストの選択肢とは思えない。レース間隔をあけるとなると、
札幌記念、
オールカマー、
京都大賞典のG2が候補となるが、舞台設定などを踏まえると妥当ではない…。
そこで選んだのが英国G1だ。インターナショナルSが開催されるヨーク競馬場は左回りで、2050メートル戦は向正面からスタートする。最初に緩やかなコーナーがあり、その後はしばらく真っすぐに進み、4角を回ると約900メートルの直線を迎えるのだが、ほぼ平たんで欧州コース特有のタフなものではない。
師は「左回りでヨーロッパの競馬場にしてはコースの起伏が小さく、日本に近い部分もあるのかなと思っています」と分析。欧州における海外遠征レースの代表格である
凱旋門賞が行われるパリロンシャン競馬場に比べ、日本馬にとっては力を発揮しやすい舞台と判断できる。
日本なら暑い夏にレースに向けての調整を行うことのリスクはあるが、同競馬場があるノースヨークシャー州は、夏でも気温は20度前後で25度を超えることはめったにない。しかも1着賞金は70万8875
ポンド(約1億3550万円)と日本のG2の倍近くあり、加えて、その後に
ジャパンCを目指すなら、さらなるメリットとしてJRAの褒賞金がある。英インターナショナルSは
ジャパンC対象の『指定外国競走』の一つで、優勝馬は日本調教馬であっても褒賞金の交付対象となり、
ジャパンCの着順(1着200万ドル、2着80万ドル、3着50万ドル、それ以外は10万ドル)によって褒賞金を受け取れる。
それだけではない。尾関師は「結果が出ればだが、種牡馬としての価値も上がるレースですからね」とうなずく。魅力的な部分が多くある。
いいことばかりを挙げているが、そこは海外遠征。簡単なものではないし、デメリットもある。中でも欧州遠征は日本調教馬にとっては鬼門となっている。ただ、日本競馬は確実に進化しており、
ドゥレッツァ自身も90年
メジロマックイーン以来となる重賞初挑戦で
菊花賞を制した逸材だ。「すごいメンバーになるけど、この馬の自在性を生かし切れればいいですね」と尾関師。結果も大事だが、チャレンジすることに意味がある。今回の英国遠征が、日本競馬にとっての新たな道となる可能性はある。(デイリースポーツ・小林正明)
提供:デイリースポーツ