まもなく9月1日「防災の日」が近づいている。1923年の同日に関東大震災があり、時期としても台風シーズンでもあることから啓発を目的として82年に制定。特に今年は元日に令和6年能登半島地震が、今月にも宮崎県を中心とした大きな地震があった。防災への関心が高まる中、普段は競走馬たちの熱戦が繰り広げられる競馬場も防災拠点の一つになっている。
万が一災害が起きて住む場所に被害があれば…。その際の生活拠点となるのが避難所である。
JRAには全国に10の競馬場が所在する10自治体とは、何らかの形で災害協定を締結。大規模災害時には一時避難所や広域避難所として使用されることになる。
実際に活用された事例として挙げられるのが、11年に発生した東日本大震災。福島市にある福島競馬場は96年に福島市と協定を結んでおり、同市の災害対策本部の要請を受けて、調整ルームの居室や厩舎居室を解放して最大550人を受け入れた。また競馬場内には合計で約380トンを貯水できる貯水槽を完備。避難してきた人はもちろん、市に対しても約50トンの水を提供した。
そのほかにも
JRAの競馬場では、レースに直接影響する範囲については非常用発電も整備。加えて防災備品に関してはおおむね3日分程度の水や
クッキーを用意し、簡易トイレや
ブランケットなども常備されている。
地方競馬においても災害時に競馬場が活用された事例がある。今年1月1日の能登半島地震では、石川県金沢市にある
金沢競馬場の駐車場に全国から緊急車両が集結。その様子はSNSを通じて広く伝えられた。発災当日は休場日であったため来場者はおらず人的被害はなし。しかし場内の一部で地盤沈下が発生し、スタンドの一部では窓ガラスの破損もあった。
そんな状況の中、3700台を収容する駐車場は、県外から派遣された緊急消防援助隊などが、震源となった能登地方へ向かう拠点として活用された。同競馬場と県との間に個別の取り決めはないものの、設置主体は石川県。そこで災害復旧に機動的に対処する県災害対策本部の指示に基づいて開放がなされた。そのほかにも断水した近隣の畜産農家に対して、場内貯水タンクから事業用水を提供した。
地震からは半年以上が経過したが、同競馬場によると、現在のところ昨年と同程度の来場者数、売上とのこと。また復興支援の一環として、能登グルメ屋台や能登物産展の出店などを行っている。担当者は「能登の復興のため競馬場でのイ
ベント等を通じ、被災した能登の事業者に対して物産販売場所・機会の提供等を行っていきたい」とし、防災対策についても「これからも災害時には協力体制を敷いていきたい」とコメントした。
同じく
地方競馬の
船橋競馬場は今年、新スタンドが完成。災害時に300人が3日間過ごせるようなつくりにし、地域の防災拠点としての役割も担っている。
いつどこで起こるか分からない災害。競馬界においても万が一への備えや、発災した際には臨機応変な対応がなされていた。防災を意識する昨今だからこそ、身の回りの備えについても再確認したいものだ。