夏競馬を締めくくるのは競馬界の「初老
ジャパン」だ。今夏の札幌で16勝(30日現在)を挙げ、札幌騎手リーディング首位を独走する
武豊(55)。函館の12勝と合わせ北海道リーディングにも王手をかけている。最終週の札幌で11頭に騎乗。デビュー38年目で初となる札幌リーディングを、宿願が懸かる秋への活力にする勢いだ。
サラリーマンなら役定(やくてい=役職定年)の壁が立ちはだかる55歳を迎えてもレジェンドジョッキーの前に壁はない。札幌リーディングで2位の横山武に6勝差、北海道(函館&札幌)リーディングでも5勝差をつけて首位を独走する。「不老長寿の秘薬を飲んでいるのですか?」。札幌で開催中の「アジア競馬会議」でこんな質問を受けた
武豊。「いや、秘薬も秘湯も利用してませんよ。トレーニングは普通にやっているけど、特別なことは何も…」と笑顔で即答すると、
武豊語録に加えたくなる言葉を口にした。「不老長寿の秘訣(ひけつ)は競馬です。ワクワクする気持ちが心の老化を防ぐ。勝つことは明日の活力にもなりますから」
札幌市内の小学校などが猛暑対策で夏休みを5日間延長した今夏の北海道。役定世代には一層こたえる夏競馬も勝利を活力剤にして乗り切った。北海道サマーシリーズ開幕日(1回函館初日=6月8日)の1Rを勝って弾みをつけると、北海道(函館、札幌)合計で28勝。夏は小倉を拠点に欧米で騎乗することも多かっただけに札幌、北海道リーディングとも自身初となる。「日本でまだ獲っていないタイトルが武さんにもあるのですか!?」。アジア競馬会議に出席した海外の競馬関係者から驚きの声が上がる中、レジェンドは「函館と札幌でこれだけ長く乗れたのも初めてですから。(いまさら)リーディングと言われてもピンと来ないけど、結果的にそうなればいいですね。調子がいいとか自覚はないけど」と語る。今日の勝利が活力となって、明日の勝利を生んでいるのだろう。
アジア競馬会議では引退の時期についても質問された。「それは僕が聞きたいです。騎手を続けたいと思っても続けられないことがある。なので続けられるうちはとことん乗っていけたらいいですね。海外にも勝ちたいレースはたくさんありますから」。世界のビッグレース優勝は、少年時代からの宿願。「秋には
ブリーダーズGC(27日、門別)を勝った
オーサムリザルト(デビュー7連勝)と胸を張って米国(BCディスタフ)に行けます。
凱旋門賞は今年(ドイツG1馬
アルリファー)で11回目の騎乗。そろそろ勝たせてほしい(笑い)」
パリ五輪の総合馬術団体で銅メダルを獲得した日本代表チームの愛称を自称するレジェンドは最終週の札幌で11鞍に騎乗。「今夏は順調に来たのでラストもいい形で締めくくりたいですね」。勝利の妙薬で役定知らずの初老
ジャパンだ。
スポニチ