名門・伊藤雄二厩舎は
エアグルーヴや
マックスビューティなど、幾多の名牝を育てたが、その中で史上最強牝馬の呼び声も上がる1頭が
ファインモーションである。
デインヒル産駒の愛国産馬。半兄には97年の
ジャパンCなどG1を6勝した
ピルサドスキーがいる良血馬である。そんな大器が重賞初制覇を果たした02年の
ローズSを回想する。
ファインモーションのデビュー戦は2歳12月の阪神の新馬(芝2000m)、鞍上は
武豊騎手だった。単勝は1.1倍の1番人気。レースはスタートから先頭に立ち、上がり3Fはメンバー中最速となる34秒0をマーク。2着に4馬身差の大楽勝だった。その勝ちっぷりから、レース後にフランス遠征が検討されたが、馬体の成長を促すために放牧へ。結果的に2戦目は8か月後の500万下(函館芝2000m)となった。ここは
松永幹夫騎手とのコンビで挑み、番手から抜け出して5馬身差でV。さらに中2週で挑んだ
阿寒湖特別も5馬身差で圧勝。一気に
秋華賞の有力候補に浮上した。
この年の春のクラシックは、
桜花賞を13番人気の
アローキャリー、
オークスを4番人気の
スマイルトゥモローが制したが、勝ち馬以外にも
ブルーリッジリバー、
チャペルコンサートなど人気薄の激走が目立っていた。それだけに
秋華賞に向けてどの馬が人気を集めるのかということにも注目が集まっていた。
そういった状況のなかで
ファインモーションの重賞初挑戦となったのが、
秋華賞トライアルの
ローズSだった。
アローキャリーら一線級との対戦は初めてだったが、単勝は1.2倍の1番人気。そしてその支持が間違いでなかったことを、走りで証明する。道中は先団で運び、4角で前に接近。直線で抜け出すと、手応えに余裕を残したまま、2着の
サクラヴィクトリアに3馬身半差の完勝を収めたのだ。
その後、
ファインモーションは単勝1.1倍の人気を背負った
秋華賞、同1.2倍の
エリザベス女王杯と連勝し、
最優秀3歳牝馬に選ばれた。結果的にこのレースは序章に過ぎなかったが、良血牝馬が全国区になったレースとして、多くのファンの脳裏に焼き付いているに違いない。