日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社・面来陽介(34)が担当する。穴党が頭をフル回転させ予想するハンデ戦。各馬に課される負担重量にスポットを当て、ハンデキャッパーの橋本真一さん(55)と江藤大介さん(53)に話を聞いた。
ハンデ戦は荒れる。競馬ファンはより一層、予想に気合が入るレースの1つだろう。そのポイントを握るのが各馬に課される負担重量。それを決定するのが11人で構成されているハンデキャッパーだ。レース開催中は各場に3名執務、追い切り日には週末レースに出走する馬の状態やレース内容をトレセンで確認したりするなど多忙な日々を送っている。
ハンデキャッパーの始動は特別登録が締め切られた日曜日の夕方。最終レースが終わり、ひと息つく間もなく業務に取りかかる。橋本さんは「ハンデ戦は1年を通して1場で毎週1、2レースは組まれています。登録馬が決まったら出走馬の資料を基に負担重量を思案する」。参考資料は馬柱のような情報があり、それに細かく目を通す。「月曜日に集まりミーティングを開きます。合議制で、各々が意見を出し合って決定します」。
負担重量を決める際に最も重要視しているのが、各馬の対戦成績。そしてトップハンデの馬を軸に他馬を決めていくこと。「過去のレースの対戦を確認しますが、若い馬は成長曲線なども加味します。どのような勝ち方をしてきたのか。また同クラスでハンデがついていれば上げるか下げるのか」など、さまざまな角度から目を向ける。
ただし、例外項目もある。調教内容はたとえ1週前追いで抜群の動きを見せていたとしても、それだけで増量することはない。その他にも天気に左右されやすい馬場、血統についても「基本的に不確定要素は頭の片隅に入れている程度です」と江藤さん。「ダート血統だからといってこの馬が初ダートで好走するだろうというのはこちらの決めつけに近い」と話してくれた。
15年以上のキャリアを重ねたハンデキャッパーが熟考して決めた負担重量。ハンデ戦のモットーは"全馬にチャンスを与えること"。橋本さんはレース前、オッズを必ず確認する。「ファンの予想が盛り上がればいいなと思っています。オッズが割れているとうれしい気持ちになります」。オッズは競馬ファンの気持ちがそのまま数字に表れる。「オッズ横一線、ゴール前横一線になってくれるのが理想です。その上でトップハンデの馬が勝ってくれると、なおうれしいですね」とハンデキャッパーの心の内を語ってくれた。
競馬の楽しみ方は十人十色。記者は馬券を当てることだけが全てではないと思っている。ハンデキャッパーとの駆け引きを楽しむとまでは言わないが、「この負担重量がどのように決まったのか」。たまにはそんなことを考えながら競馬を楽しむのもありなのかもしれない。
◇面来 陽介(おもらい・ようすけ)1990年(平2)9月7日生まれ、埼玉県出身の34歳。元消防士。1年間の見習い期間を経て4月から記者デビュー。
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