伝統のレース名「
赤富士S」が2年ぶりに復活する。由来となった赤富士とは、普段は青みがかって見える富士山が日光などに照らされ赤く染まる現象をいう。多くの画家によってその様子は描かれ、また俳句の季語としても使われる。日本人にとっては馴染みのある風景、響きのひとつだろう。
競走名としても長く使われており、弊社調べでは1969年の東京芝2000m戦に赤富士賞の名前を見ることができる。以来、施行距離や条件は変えつつも、10月〜11月の東京競馬で開催されてきた。過去の勝ち馬を見れば、古くは75年にのちの天皇賞&
宝塚記念馬
フジノパーシア、88年には長距離巧者として鳴らした
スルーオダイナの名前もある。
ダ2100mに固定された97年以降では、99年
ワールドクリーク、00年
リージェントブラフ、11年
ソリタリーキング、22年
ペプチドナイルなど、のちにダートの一線級で活躍する馬が勝ち名乗りを上げてきた。レースが行われていない年も数回あるが、東京競馬場のスタンド改修工事やアジア競馬会議による競走名変更などがあり、平時ならばほとんどの年で実施されており、長い歴史を紡いできたレース名なのは間違いない。
そんな“伝統の一戦”は、昨年ダ1600mに条件を変えて行われる予定だったが、
JRAアプリの登場記念および告知を兼ねて、「
JRAアプリリリース記念」の名で実施された。長く慣れ親しんだレースタイトルが使われないことには、少々寂しさも感じたが、今年は無事に「赤富士」の名が復活する運びとなった。
先日、
JRAから来年度の開催日割について発表がなされ、
アーリントンCが
チャーチルダウンズCに変わるなど、レース名についてもいくつかの変更があった。長年使われてきた競走タイトルは、響きを耳にすると、季節の訪れや過去の勝ち馬、レース条件を思い浮かべるもの。重賞だけでなく、条件戦の特別競走名も長く使われていくことを願う。
今週末の
赤富士Sには、ここまで4戦3勝の
アッシュルバニパルや、3連勝中の
グラウンドビートなど、未来のダート王候補も複数出走を予定している。今年の
フェブラリーSを制した
ペプチドナイルのように、歴史あるレースから大きく飛躍する馬は出てくるだろうか。