カツラギエース、
サクラユタカオー、
ダイナアクトレス、
サイレンススズカ、
グラスワンダー、
エイシンプレストン、
ダイワメジャー…。過去の優勝馬名を挙げるだけでワクワクする。それが
毎日王冠だ。
少頭数、でもハイレベル。そういう“矛盾”が起こる一戦でもある。
サイレンススズカ、
グラスワンダー、
エルコンドルパサーがそろい踏みして、
サイレンススズカが勝った98年が代表的だ。
しかし、古参記者としては、この一戦を推したい。89年、8頭立ての
毎日王冠だ。
メンバーは相当に濃かった。1番人気は
オグリキャップ。問答無用のスーパーホース。前年の
有馬記念を3歳にして制覇。けいじん帯炎明けの
オールカマーを快勝し、万全の状態だった。
2番人気は
メジロアルダン。3冠牝馬
メジロラモーヌの弟として注目を浴び、ダービーは
サクラチヨノオーの2着。1年の休養を経てメイS、高松宮杯(当時G2、2000メートル)を快勝し、G1制覇に向けていよいよ本格化かと期待された。
3番人気は
イナリワン。5歳にして
地方競馬から移籍し、春は
武豊を背に
天皇賞・春、
宝塚記念を連勝。ここが
オグリキャップとの初の顔合わせとなった。
武豊は同日の京都で行われる
京都大賞典で
スーパークリークに騎乗するため柴田政人に乗り代わった。
4番人気
グランドキャニオンも強豪だった。長期休養を挟んで4連勝。
函館記念2着からここに臨んだ。常に好位を取る安定した競馬で崩れないタイプだった。
8頭立て。だが、見どころ満載。いかにも
毎日王冠という一戦のゲートが開いた。
平均的なペースで流れ、直線を向く。岡部幸雄・
メジロアルダンの手応えが絶好だ。前を行く2頭の手応えを見ながら追い出しのタイミングをうかがう。外から
イナリワンと
オグリキャップが迫った。
残り100メートル。
ゴーサインを受けた
メジロアルダンが先頭に立つ。だが
イナリワンが来た。残り50で先頭。普通は
イナリワンが勝つ競馬だ。しかし、外からオグリがグッと首を伸ばす。鼻差、
オグリキャップが先着していた。
2着に敗れた
イナリワン・柴田政人は
オグリキャップの勝負根性を称えた。「こちらが突き抜けるかと思った。それほどの手応えだったのに。(オグリは)凄い馬だよ」。
オグリキャップ・南井克巳も激戦の余韻に浸った。「ほんま、ゴール前は凄かったよ…」
その後、南井騎手はこう語った。「
京都大賞典では
スーパークリークが復活したんだって?
イナリワンも
メジロアルダンも、ここから良くなるだろうしね」。秋のG1戦線がし烈なものとなることを予言した。
ここから
オグリキャップは
天皇賞・秋2着、
マイルCS1着、連闘の
ジャパンC2着、
有馬記念5着。伝説のG1ロードが始まろうとしていた。
スポニチ