東京競馬場で14日(月)に行われる
府中牝馬ステークス(3歳上牝・GII・芝1800m)は、現在
JRAで実施されている古馬が出走可能な牝馬限定重賞の中で、もっとも長い歴史を持つ。ゆえに名称や競走条件はたびたび変更されているが、先日発表された来年度の競走体系によれば、
府中牝馬Sから
アイルランドTに改称されるとのこと。これは実に6度目のレース名変更となる。
創設されたのは1953年で、当時は東京牝馬特別の名前だった。東京芝2000mのハンデキャップ戦として行われ、記念すべき第1回を制したのは3歳牝馬の
チエリオ。同馬は『宮本武蔵』や『新・平家物語』など、歴史テーマの大衆小説を執筆した吉川英治氏が所有しており、5歳時には啓衆社主催の年間表彰制度(
JRA賞の前身とされる)で、初代の最良5歳以上牝馬に選出された。
55年には芝1600mに距離短縮し、60年代に入るとレース名を頻繁に変更。当時首都圏で発行されていた朝刊専門の日刊新聞『東京タイムズ』を冠名に拝し、64年に東京タイムズ杯東京牝馬特別、65年に東京タイムズ杯牝馬特別、67年に牝馬東京タイムズ杯と改称を重ねる。施行条件も時代に合わせて変化し、69年には負担重量が別定に変更。71年に勝った
トウメイは続く
天皇賞(秋)、
有馬記念を勝ち、啓衆社賞
年度代表馬、最優秀5歳以上牝馬に選ばれている。
以降、長らくタイムズ杯として親しまれてきたが、92年から
府中牝馬ステークスに変更。同年7月31日をもって、『東京タイムズ』も46年の歴史に終止符を打ち休刊している。96年には1800mへと延長され、同年から古馬開放された
エリザベス女王杯への前哨戦となった。11年にはGIIへ格上げされ、注目度はますます上昇。17年に日本とアイルランドの外交樹立60周年記念として、
アイルランドトロフィー府中牝馬ステークスに変わり、近年では
リスグラシューや
ラッキーライラック、
アカイイトがここを
ステップに
エリザベス女王杯を制すなど、重要度は年々増している。
そんな歴史あるレースは、来年から
アイルランドTというタイトルになる。「
府中牝馬S」の名前そのものは、
マーメイドSを改称する形で残存するが、6回も競走名が変わったレースはそう多く無いのではないか。名前が変わっても、秋の女王決定戦に通ずる前哨戦の立ち位置には変化なし。今後も秋の府中の名物重賞として、歴史を重ねていくことだろう。
【レース名改称の年表】
53年…東京牝馬特別
64年…東京タイムズ杯東京牝馬特別
65年…東京タイムズ杯牝馬特別
67年…牝馬東京タイムズ杯
92年…
府中牝馬ステークス17年…
アイルランドトロフィー府中牝馬ステークス25年…
アイルランドトロフィー(予定)
※
マーメイドSを
府中牝馬Sに改称のうえ、6月にGIIIのハンデ戦として実施。