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熱い思い秘めたパンチー・ン師 目指すは世界の高み

スポニチ
  • 2024年10月10日(木) 05時11分
 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の後藤光志(28)が担当する。いよいよ秋のG1シリーズがスタート。その開幕戦となったスプリンターズSに出走した香港馬ムゲンを管理するパンチー・ン調教師(41)は特別な思いを持ってレースに臨んでいた。

 香港馬の躍進が目立つ今年のG1戦線。高松宮記念ではビクターザウィナーが3着。安田記念ではロマンチックウォリアーが18年ぶりの香港馬Vを果たした。先月29日、秋のG1シリーズ開幕戦となったスプリンターズSには香港から2頭の“刺客”が出走。ビクターザウィナーと、自国の重賞を制して勢いに乗っていたムゲン。後者を管理するン師は熱い思いを胸に秘めていた。

 師は15年、ポール・オサリバン厩舎の調教助手を務めていた際、高松宮記念に出走したエアロヴェロシティに同行して来日。同馬はやや重の馬場も苦にせず強力日本馬を撃破した。あれから9年。「調教助手の時代と違ってわが厩舎のスタッフと、わが厩舎のユニホームを着て臨むレース。気持ちとしては(当時と)全く違うものがある」。気持ちを新たに、今度は調教師として日本へ帰ってきた。

 モットーは「ハッピーホースはレースに勝つ」という考え。「馬がいいレースをするために、いいパフォーマンスを引き出すために、いかにわれわれが面倒を見られるか。具体的には餌をよく食べること、よく運動すること。そして機嫌が良いこと」と指揮官。その言葉通り、ムゲンとコンビを組んだティータンとは調教後も、密に連係して馬の状態把握に努めていた。

 そして何より師は大の日本通。オーストラリアのニューサウスウェールズ大では安全科学と日本研究の理学士号を取得したほか、栗東やノーザンファームなどで研修した経験も持つ。「日本の競馬の環境はパーフェクトですし、スタッフにとっても日本に来るのはいい経験」とうなずいた。

 22/23年シーズンに香港で厩舎を開業。2年目の23/24年シーズンは最終日までリーディング争いを演じた新進気鋭のトレーナー。「厩舎としてもできるだけ海外で勝っていきたい思いがある」。スプリンターズSムゲンは13着と結果は出なかったが、ン師の挑戦は終わりではない。「香港以外のアジアのレースに参戦することは馬にとってもスタッフにとっても勉強になる。アジアで経験を積み、その先を考えたい」。そのまなざしは世界の高みへと向けられている。

 ◇パンチー・ン 1983年8月2日生まれ、香港出身の41歳。豪州やニュージーランド、日本などで経験を積み、13年からポール・オサリバン厩舎の調教助手を務める。開業1年目の22/23年シーズンに41勝を挙げ香港リーディング10位。23/24年シーズンは69勝をマークし同リーディング2位と躍進。

 ◇後藤 光志(ごとう・こうし)1995年(平7)12月8日生まれ、愛知県出身の28歳。中央大学文学部卒業後、20年スポニチ入社。整理部、福島支局を経て、今年4月から競馬担当。

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