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“武邦イズム”胸に宮地師いよいよ来週開業

スポニチ
  • 2024年10月17日(木) 05時05分
 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社・栗林幸太郎(41)が担当する。昨年、調教師試験に合格した宮地貴稔技術調教師(44)は21日に栗東で新規開業を控える。これまでの経緯と調教師デビュー目前の心境を聞いた。

 新たなトレーナーがまもなく門出を迎える。宮地貴稔技術調教師は調教助手を経て昨年12月、7度目の受験で調教師試験に合格。8月、川村禎彦厩舎の解散による庄野厩舎への馬房臨時貸付期間が20日に満了することに伴い、翌21日付で新規開業する運びとなった。

 トウカイテイオーが制した有馬記念をきっかけに本格的に競馬に興味を持ち、高校卒業後にオーストラリアで競馬を学んだ異色の経歴の持ち主。JRA競馬学校厩務員過程に入学、トレセンに入ってからは武邦彦厩舎で研さんを積んだ。

 「まだ経験のない僕に対して、先生には好きにやらせてもらいました。いろいろなことを自分で考えて経験させてもらい、今では凄く役に立っています」

 騎手、調教師として活躍した名伯楽の下で切磋琢磨(せっさたくま)し、ホースマンとしての基礎を叩き込まれた。「馬にはしっかり手をかけてあげなさい」。恩師からの“格言”は今でも心に深く刻み込まれている。親身になって寄り添うことの大切さを実感し密度の濃い付き合いを学んだ。

 その後は武邦師の定年に伴い、笹田厩舎に移籍。「笹田先生は本当に馬の成長具合や体調に合わせて使われていました。人の事情を押しつけず、馬本位の考えで使われていたのは見習いたいですね」。環境とやり方は変わっても合わせながら吸収し、状況に応じた柔軟性で知識を深めた。

 19年続けた助手生活の中で、気持ちの変化も。「最初は(調教師を)目指す気はなかったけど長年(助手を)させてもらい自分でああしたい、こうしたいというところがあった」。ホースマンを続けていく上で、あくなき向上心が新たなる第一歩へとつながった。

 昨年の合格発表から10カ月、牧場や海外などで研修を続け、改めて競馬の奥深さを知った。「20年近くトレセンでしかやって来なかった。牧場などではいろんなことを試して取り入れて、トレセンより進んでいる部分もあった。新たに気付かせてもらい、僕の引き出しも増えたと思う」。準備期間で学んだことは多く、確実に視野は広がった。

 いよいよ来週から厩舎を開業する。「まずはそれぞれの馬に合わせて一つ一つ勝っていきたい。オーナーさんに競馬を楽しんでもらいたいし、スタッフにはこの厩舎で働いて良かったと、誇りに思ってほしい」と抱負を語った。恩師からの学び、さまざまな経験で吸収した知識をベースに新たな一歩を踏み出す。新人トレーナーに注目していきたい。

 ◇宮地 貴稔(みやじ・たかとし)1980年(昭55)10月15日生まれ、大阪府出身の44歳。高校卒業後、オーストラリアに競馬留学。04年7月JRA競馬学校厩務員過程に入学、翌年7月から武邦彦厩舎の厩務員、11月から調教助手。同厩舎解散後、09年3月から笹田厩舎に所属。23年12月調教師免許試験に合格。24年10月21日に開業予定。

 ◇栗林 幸太郎(くりばやし・こうたろう)1983年(昭58)1月10日生まれ、東京都出身の41歳。18歳でオーストラリアに渡り競馬学校に入学。競馬全般を学び、卒業後は美浦近郊の育成牧場へ。芸能事務所に勤務して、大物タレントのマネジャーも経験。その後、ボートレースと競輪の専門紙を経て18年にスポニチ入社。

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