ダート三冠の最終章・
ジャパンダートクラシックJpnIは、
フォーエバーヤングの強さが際立った。スタート直後に躓いたが、逃げる
カシマエスパーダと外枠から先行する
サンライズジパングの間をこじ開けるように、
坂井瑠星騎手は2番手を死守した。砂を被った経験はあるものの、1番枠で揉まれる不安と砂を被って位置を下げることを恐れ、早い段階から進路を確保したかったものと推測される。
昨年の
JBC2歳優駿JpnIIIでは鮮やかに差し切ったが、
全日本2歳優駿JpnIでは初のマイル戦で楽々先行し、直線はまさに独壇場。あらゆる勝ちっぷりに衝撃を受けた。目の前で圧巻のパフォーマンスを見せてくれた
フォーエバーヤングが、ダートの本場であるアメリカの
ケンタッキーダービーG1で大激戦を繰り広げたことは、ファンはもちろん、日本のホースマンに勇気と感動を与えた。
ジャパンダートクラシックJpnIの盛り上がりは、
フォーエバーヤングが早々と参戦することが伝えられたこととともに、
東京ダービーJpnIを制した
ラムジェット、
レパードステークスGIIIで重賞初制覇を飾った
ミッキーファイト、
不来方賞JpnIIを優勝した
サンライズジパングなど、ダート三冠路線を歩む馬たちが集結したことが、ファンの関心を高めた。
そして、地方所属馬としてメンバー中唯一のダート
グレードホルダーである
サントノーレが、
戸塚記念で復帰戦を飾り、地方代表として期待を集めた。また、
東京ダービーJpnIで地方最先着を果たした
シンメデージーと、
不来方賞JpnIIで4着に健闘した
フジユージーン、昨年の
JBC2歳優駿JpnIIIで3着に追い込んだ
ブラックバトラーなど、ダート
グレード競走で入着した遠方の地方所属馬が出走したことも、真のダート世代チャンピオンを決めるに相応しいメンバーとなった。その中で、
東京ダービーJpnIに続き、
ジャパンダートクラシックJpnIでも
シンメデージーが地方最先着となったことは、来年以降のダート三冠に向け、南関東以外の地方馬も出走意欲を持つきっかけになっただろう。
地方競馬を舞台とするレースは、JBC競走であってもファンの認知度はあまり高くない。だからこそ、2018年に
JRA京都競馬場でJBC競走を行った意義は大きい。また2020年には、
北海道2歳優駿JpnIIIが
JBC2歳優駿JpnIIIとなり、JBC競走に2歳カテゴリーが加わった。昨年の
JBC2歳優駿JpnIIIが
フォーエバーヤングと
サンライズジパングによるワンツー決着だったことで、2頭のその後の活躍を考えると出世レースとしてファンに認知されることを期待できる。
JRAのレースしか見ないというファンに対し、
JRAのトップホースの参戦は、
地方競馬を多くのファンに認識してもらうきっかけにもなる。その馬たちに対し、地方所属馬がどこまで戦えるか、あるいは互角以上に渡り合えるかを見せることも必要不可欠だ。
新ダート体系で、3歳牝馬限定のレースとして生まれ変わった
マリーンカップJpnIIIが9月26日に
船橋競馬場で行われたが、地方馬は南関東から2頭しか出走せず、6頭立てと寂しい争いとなった。
ブルーバードカップJpnIIIを優勝するなど春のダート二冠を戦った
アンモシエラと、
関東オークスJpnIIを逃げ切った
アンデスビエントが出走したことで、地方馬たちが敬遠してしまったようだが、2頭がスタートから競り合う展開となり、前半3F=34秒9、5F=61秒2のハイペースを生み出し、共倒れの形となった。地元船橋のザオは積極的なレース運びで4コーナーでは先頭。見せ場十分の走りで3着に健闘した。改めて、レースは何が起こるかわからないことを示す結果だった。
多くのファンは、“
JRA>地方”という図式で馬券を検討する。これは、ファンの数やこれまでのレース結果を踏まえれば致し方ない。その中でファンを驚かせるレースを見せることで、その地区の競馬に目を向け、本当の地元ということではない地元意識が根付く。高知競馬が『ヨルノヲケイバ』などYouTube配信などを通じてファンを獲得し、売上を伸ばしていることは、まさにその象徴と言える。
兵庫の
イグナイターは、大井所属時の
ユニコーンステークスGIIIから数えて12回目のダート
グレード競走挑戦、5度目のJpnI挑戦で昨年の
JBCスプリントJpnIを優勝した。今年の
さきたま杯JpnIは
レモンポップの2着と悔しい思いをし、秋初戦の
東京盃JpnIIでは1番人気に支持された。
フェブラリーステークスGIを含め、ダート
グレード競走15回目の挑戦で初の1番人気だったが、残念ながら結果は6着と奮わなかった。しかし、地方馬がダート
グレード競走で1番人気になることは、過去を見てもそうあることではない。
JBCスプリントJpnI連覇へ、巻き返しを期待したい。
いよいよJBCを迎える。最も距離が離れた2つの競馬場で行われる初の開催となるが、北海道から
シルトプレも
JBCクラシックJpnIに出走予定。お互いのレースを盛り上げるべく、全国の雄が打倒
JRAを目指す姿を応援したい。
(文:古谷剛彦)