スマートフォンの不適切使用問題が競馬界で相次いでいる。今月11日には、女性ジョッキーの先駆者として活躍していた藤田菜七子騎手(27)=美浦・根本=が、一部週刊誌に掲載された昨年4月ごろの事案を発端に、最終的には現役を引退した。
昨年に若手騎手6人、今年に入ると
水沼元輝騎手が来年2月末まで9カ月間の騎乗処分停止を受け、そして現在は
永野猛蔵騎手と
小林勝太騎手も同様の問題で詳細を調査中。その後、裁定委員会で処分が下される。
この両名の件に関して、東西のトレセン公正室長が9日に会見を開いた。栗東トレセンの上妻和道室長は「非常に遺憾に思う。今の若い騎手ははき違えている。これまでの経緯を無視した行動を取ってしまっている」と強い憤りをにじませた。
さかのぼると
中央競馬では、1965年に山岡事件が起きている。当時、関東のトップジョッキーであった山岡つとむ(したごころに文)らに暴力団員が金品などを提供し、八百長行為を行わせた事件で、収賄罪により逮捕に至った。それを機に、外部との接触を断つ調整ルームの入室義務など厳格化されたルールが導入された。「1965年に重大な公正事案があったなかで厳しく運用されてきたが、JRAと騎手クラブの信頼関係の中で少しずつルール運用を緩めてきた。騎手クラブの自主性を高めるといったところで、そうなってきた事実がある」といった“これまでの経緯”があるだけに、若手騎手の相次ぐ事案は裏切りと捉えられても仕方がない。
改めて現在の調整ルームの運用を整理すると、JRAの所属騎手は競馬開催前日の21時までに競馬場か、東西トレセンの調整ルームに入室するのが義務。入室の際には玄関に設置されているロッカーに職員立ち会いのもと通信機器を預け、開催が終了するまで機器を取り出すことは禁止されいる。水沼騎手の件ではスマホ本体ではなくスマホのケースをロッカーに預け、永野騎手の場合は所有している2台のうち1台を預け、もう1台を居室内へ持ち込み、外部と通信していたことが確認されている。
JRAとしても、騎手クラブに対しての注意喚起や、外部講師を招いた東西騎手クラブへのコンプ
ライアンス研修を実施。また騎手教育をつかさどる競馬学校では、通信機器の取り扱いについて授業の数を増やしているという。ただ「なかなか成果は出ていない」と同室長が言うように、後手に回っているのは否めない。
そもそも調整ルーム内への通信機器持ち込みが禁止になったのは、昨年6月のジョッキールームへのスマホ持ち込み事案以降。15年には
ルメール騎手、16年には丸山騎手が調整ルーム内からツイッターなどで外部との規則違反通信を行い、30日間の騎乗停止となっていただけに、手を打つ時間はあったはず。またボートレースや競輪など他の公営競技よりも運用ルール、処分が甘かったのも大いに指摘されるところだろう。
上妻室長は「個人的な見解としては持ち物検査に限らず、居室内の抜き打ち検査なども意見として出てくると思う」と、より踏み込んだ対策に言及したが、これ以上の不信は避けねばならない。今後の流れを注視していきたい。(デイリースポーツ・島田敬将)
提供:デイリースポーツ