日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社・鈴木悠貴(33)が担当する。今回スポットを当てたのは“馬産業の労働力人口減少”。
JRA総合企画部経営企画室の小林錦司さんに問題解決に向けた取り組みについて話を聞いた。
少子高齢化や職種多様化に伴う労働力人口減少。もちろん、馬産業も決して例外ではない。近年、生産や育成を担う牧場では、主にインドや南米からの外国人労働者に頼らざるを得ないのが現状だ。
労働力を補う意味では彼らの参入は喜ばしい面もあるだろう。ただ、今後の産業発展を考えた時、経験と知識を後世に伝えることのできる日本人は不可欠。実際に北海道の生産地に足を運び、牧場や診療施設など現場関係者の声を聞いたという小林さんは「かつてと比べると厩舎スタッフ志望の人数は低い水準で推移しているし、牧場の状況はそれ以上に深刻。生産地に獣医師が集まらず困っているという話もあった」と課題を実感している。
日本人労働者増へ――。まずは閉鎖的とも思われる馬産業を身近に感じてもらいたい。その一心で9月19日、
JRAは馬に関わる仕事紹介のための「UMAJOBポータルサイト」を
リニューアルオープンした。このサイトでは競馬に携わる仕事の業務内容、一日の流れなどをかわいらしいイラストを交え紹介。「あえてわれわれ世代が落ち着きを感じる緑や土の色合いではなく
ビビッドなもので構成した。これで若者に刺さってくれれば」と小林さんは“刷新”の効果に期待する。
また11月9、10日にはWINS新宿の近くにある「サナギ新宿」でイ
ベント「UMAJOBフェス」を開催。パネルや映像で馬の仕事を紹介するほか、大きな馬のぬいぐるみや馬
ロボットとのフォトスポットも用意して家族連れにも気軽に立ち寄ってもらいたいとのこと。また、「職業の選択肢の一つとして強く意識してもらうため、ぜひ生の声も聞いてほしい」という考えで、馬に関係する団体(JBBA・BTC・HBA・IBA・日本調教師会・日本装削蹄協会・競馬学校)スタッフによるお仕事相談コーナーも設けられる。
団体個々での人材確保の取り組みはこれまでもあったが、総括的なものは今回が初。小林さんは「これまでの方法だと露出に限界がある。だから私たちが“目配り”をしながらまとめて、発信力を強化していこうと考えている」と企画の意図を説明する。「自分が携わった馬が、人間よりも短い
サイクルで成長して大きな舞台で活躍し、次の世代につながっていく。競馬にはとにかく夢がある。ぜひそういう部分も知ってもらいたい」と小林さん。たゆまぬ人材創出の先に、さらなる競馬産業の発展が待っているに違いない。
◇鈴木 悠貴(すずき・ゆうき)1991年(平3)4月17日生まれ、埼玉県出身の33歳。千葉大法経学部を卒業後14年にスポニチ入社。今年1月から競馬担当。
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